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Review: いいむろなおきマイムカンパニー 『doubt』 @ こまばアゴラ劇場 (マイム)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2017/11/05
こまばアゴラ劇場
2017/11/04, 15:00-16:30.
振付・演出: いいむろなおき
出演: いいむろなおき, 青木 はなえ, 田中 啓介, 三浦 求, 岡村 渉, 黒木 夏海, 谷 啓吾.

フランス École Internationale de Mimodrame de Paris Marcel Marceau (パリ市マルセル・マルソー国際マイム演劇学校) に学び、 1998年から関西を拠点に活動する いいむろなおき のマイムカンパニー。 東京でカンパニー公演を観る機会は少なく今まで見逃してきたが、今回やっと観ることができた。

いいむろなおきの演じる旅の男の、鉄道旅行中の居眠りの際に見た不条理な夢、というか、不条理なふれあい街歩き。 黒い剥き出しの舞台に暗色の匿名的な服装。白い箱、枠、カバンなど小道具も最低限で、そんな不条理な話を紡いでいく。 無地の黒いマスク使いも効果的。特に、主人公は夢の中ではマスクをし続けることで、個性的な誰かではない、むしろ観客自身を象徴させるよう。 ブラックライトで白手袋で手を浮かび上がらせ文字や形を形作ったりしたが、ストロボライトなどの照明技やビデオプロジェクションなどは使わず。 オーソドックスに緻密に組み上げられた身体表現で見せるような演出だった。 最初の方の居眠り前の鉄道旅の客車内の場面の ピクシレーション (コマ撮りを動画化した映像) をストロボライトも使わずにマイムで表現したところや、 主人公が登場しない中盤の夢中の場面で待ち合わせ中の男性が妄想する場面で 妄想している人物を舞台後方に、妄想の内容を舞台上手前方で描いて時にこの二つを相互作用させて表現したところが、 特に印象に残った。 ユーモアのセンスもよく良く、面白かった。

カンパニーデラシネラ 『ロミオとジュリエット』 [鑑賞メモ] のように セリフも排さずに物語ることにがっつり取り組んでいる良い作品もあるけれども、 KAAT × 小野寺 修二 『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 [鑑賞メモ] に続いてこの舞台を観て、 動きの連想で自在につなぐスケッチ集のような作品がマイム演劇のオーソドックスな面白さだと、再確認。 水と油 〜 小野寺 修二 との作風の違いとして、空間の操作よりも時間の操作に焦点を当てているように感じたが、 いいむろなおきの観た作品はこの作品だけなので、作品のコンセプトや会場のせいかもしれない、とも。 シアタートラムくらいの広さのステージで観たら空間的な操作の面白さも楽しめたかもしれない、と思いつつ、 こまばアゴラ劇場の狭い舞台で7人でやるからパズルのような動きや位置どりの妙が強調される面白さもあったかな、と。