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Review: カンパニーデラシネラ 『ロミオとジュリエット』 @ 東京芸術劇場シアターイースト (演劇/ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2016/7/20
『ロミオとジュリエット』
Company Derashinera: Romeo and Juliet
東京芸術劇場 シアターイースト
2016/07/17, 18:00-19:30.
原作: William Shakespeare: Romeo and Juliet. 翻訳: 松岡 和子.
演出: 小野寺 修二; 美術: 石黒 猛.
出演: 斉藤 悠, 崎山 莉奈, 王下 貴司, 大庭 裕介, 藤田 桃子, 小野寺 修二.
初演: 高知県立美術館, 2011.

小野寺 修二 (ex-水と油) 主宰のカンパニーデラシネラの2011年初演の作品。 2011年にIID世田谷ものづくり学校で観ているのですが [鑑賞メモ]、 良い印象が残っておらず、 再演を繰り返していたのは知っていましたが、見切ってしまっていた感もありました。 しかし、5月の静岡の『「まちは劇場」プロジェクト ストレンジシード』での良い評判を目にしたので、 再見することにしました。

前に観たときは元学校の教室という狭い空間で、身体の動きもこじんまりとしてしまっていましたが、 劇場の広い空間を得て、ダンスやマイムの動きものびのびと、遥かによく感じました。 動きとセリフを別のパフォーマーに振り分けたり、ダンスやマイムでの象徴的な動きで場面や心理を表現しながら、 異化を狙うというより、想像が促されるよう。そこが良く感じられました。 演劇の間にダンスシーンがあるのでもなく、ダンスの合間にセリフで場面や背景を説明するのでもなく、 そんな区別のない身体的な表現を駆使した抽象的な演劇に感じられました。 海外の演劇を観ているとそう感じる作品も少なくなく、 例えば2010年に観た Runar Hodne / Nationaltheatret: En Folkefiende [鑑賞メモ] を連想しましたし、 最近観たものでは、ライブ・ビューイングですが、 Marianne Elliott / Royal National Theatre: The Curious Incident of the Dog in the Night-Time [鑑賞メモ] での鉄道や地下鉄の場面の描写を思い出しました。 カンパニーデラシネラは、こういった演劇表現に日本で最も近い所にいるカンパニーかもしれません。

この『ロミオとジュリエット』は「『劇場』ではない場所での空間の持つ特性を生かした作品」ということで、 初演は美術館のエントランスでの上演でしたし、今年5月の静岡も市役所の玄関前での上演、 今年6〜7月には全国の小中学校を回るツアーをしています。 今回は劇場での公演ということで少々変則的な所もあったのかもしれません。 しかし、ハンディライトやスポットライトを使った演出など、照明をコントロールできる劇場ならではの演出も楽しむことができました。 劇場ではない場所ならでの観客参加型の演出もこの作品の謳い文句になっていて、 確かに、舞踏会の場面での観客を舞台に上げてのダンスや、結婚式の場面で観客に祝福させたりと、観客参加が楽しめる所はあります。 しかし、作品全体から見ると観客が参加する場面は作品に不可欠な要素というより補助的なものでした。

初演から5年上演し続けていた作品ですが、ここまで練度が上がっているとは思いませんでした。 オリジナルの脚本ではなく古典的名作に基づいているということもレパートリー化に向いているのかもしれませんが、 レパートリー化して再演を重ねることの意義を見たようにも思いました。