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Review: 『素材と対話するアートとデザイン』 @ 富山県美術館 (デザイン展/美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/01/21
富山県美術館
2017/11/16-2018/01/08 (水休;祝開,翌休;12/29-1/3休), 9:30-18:00,

1981年に富山駅の南側、城南公園の一角にオープンした富山県立近代美術館は、 耐震、空調、防火などの施設が現代の基準に満たなかったこともあり、移転新築することになり、 2016年12月末をもって閉館。 移転後は富山県美術館と名称が変わり、2017年3月25日からのプレオープンを経て、2017年8月26日に富山駅の北西側、富岩運河環水公園の一角にオープンしました。 良さげな作品が出展された展覧会をやっていることもあり、どんな美術館になったのかという興味もあって、 金沢へ展覧会 [鑑賞メモ] を観に行った帰りに足を運んでみました。

開館記念展 Part 2 『素材と対話するアートとデザイン』 は、 どちらかといえばデザイン寄りの展覧会。 やはり最も印象に残ったのは、会場入ってすぐの Emanuelle Moureaux: “Color of time” (2017)。 展覧会初日11/16の06:30から日没後色が見えなくなる19:49までの799分を色のグラデーションで表現したインスタレーションで、 1分毎の時刻を表した文字に色を付け、それを並べて吊るして、大きなトンネル状の空間を作り出していました。 物量的な存在感と色の美しさも良いのだが、緑色などの色も使われており、かなり恣意的に色は選ばれているよう。 その時々の空のある特定の領域の色からサンプリングしたりと条件を厳しくした方がコンセプチャルになると思うけれども、 そうしたらここまで鮮やかな色彩のインスタレーションにならなかっただろうな、とも。

デザインの展示は、素材に焦点を当てたもの。 いわゆる新素材というより、リサイクル素材が多くあったのは、時代でしょうか。 造形については素材を際立たせるミニマリズム的なデザインが目立ちました。

新開館といっても、富山県立近代美術館のコレクションを引き継いでいますので、コレクション展示も充実しています。 絵画や彫刻などの近代美術作品よりもデザインの展示の方が映える展示空間でしょうか。

富山県立近代美術館といえば1985年から開催している世界ポスタートリエンナーレで、 ポスターのコレクションが充実していることで有名。 戦後20世紀半ばのモダンなデザインなものを中心に、東欧のものも充実。そのポスターコレクションも楽しめました。

また、モダンデザインの椅子のコレクションの展示もありました。 椅子のコレクションといえば、武蔵野美術大学のコレクションが有名ですが [鑑賞メモ]、 富山にもこんなに充実したコレクションがあったのですね。座れる椅子も三脚あって、展示を堪能しました。

富山県といえば 瀧口 修造 の出身県で、その縁もあって、その遺品が富山県立近代美術館のコレクションとなっていたのですが、 この展示コーナーがオシャレになっていました。 まるでラグジュアリー・ブランドの商品ディスプレイのよう、と、思ってしまいました。 シュルレアリスムの紹介者としては、カオティックな展示にした方が、それらしい雰囲気が楽しめたんじゃないか、とも、思いましたが。

美術館の屋上は、佐藤 卓 のデザインの「グルグル」などのオノマトペに着想した遊具が並ぶ子供向けのプレイグラウンド『オノマトペの屋上』となっています。 年間スケジュールでは冬季は閉鎖でしたが、年末年始は特別開放していました。 子連れの家族でかなり賑わっていて、遊具もほとんど埋まっていました。コンセプト倒れになっておらず、何より。

北陸新幹線が出来て東京から近くなった上、富山駅からのアクセスも良いですし、 富山市内で古い街並みが残る岩瀬浜とも富岩運河で繋がってますし、金沢と合わせて行くのにうってつけ。 これからも時々足を運びたいものです。