Chroma [鑑賞メモ] 以来約2年ぶりの新国立劇場での 高谷 史郎 のダンス公演は2015初演の作品。 Chroma では光の映像で床に水が張られているかのように見せる演出が印象に残ったのですが、 今回は実際に床に正方形に薄く水を張って、その上でパフォーマンスを繰り広げました。 先日観た 坂本龍一+高谷史郎 「water state 1」 (2013) [鑑賞メモ] をステージにして踊っているよう、 というか、このようなインスタレーション作品からイメージを広げて作られた作品なのでしょう。
水の床の上にテーブルが3台と椅子が数脚。 ときに会食のテーブルに、ときに寝台のように、テーブルを使っていました。 後方にテーブル天板の同じようなサイズの映像スクリーンが一枚建てられていて、 ライブで撮影した映像を投影したり、ほとんど白い背景に物が落ちて砕けるといったミニマルで象徴的な映像が流されたり。 寒白色で照度の低い少々逆光気味な照明は、半ばシルエットとしてダンサーを浮かび上がらせます。 技巧的なダンスを見せるわけではないけれども、水面の波紋の揺らぎ、足の動きに伴う飛沫なども加わって、 Chroma 以上にフォトジェニックでビデオジェニック。 実際の水の質感、光には、ビデオプロジェクションはまだまだ負けます。 坂本龍一+高谷史郎「water state 1」 (2013) [鑑賞メモ] のようなインスタレーションからイメージを広げて、この舞台作品になったのだろうな、とも。
高谷 史郎の作品を見るたびに思うのですが、ビジュアルとしてはかなり好みなのですが、 これが1時間半近く続くと、いささか単調で空虚な感も否めません。 「静物画」 (テーブルの上の物は「静物画」を意識していたように感じられた)や「静寂」を思わせるタイトルなので、 ドラマチックな展開などは意図していないだろうし、自分が空虚と感じるこの雰囲気も、作家の意図なんだろうとは思いますが。