TFJ's Sidewalk Cafe > Dustbin Of History >
Review: Sid Larbi Cherkaoui / María Pagés: Dunas @ オーチャードホール (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/04/14
オーチャードホール (渋谷)
2018/03/31, 14:00-15:30.
Choreography: Sidi Larbi Cherkaoui, María Pagés; Music composition: Szymon Brzóska, Rubén Levaniegos, José "Fity" Carrillo.
Dance: Sidi Larbi Cherkaoui, María Pagés.
Live music: Ana Ramón (cante), Bernardo Miranda (cante), Mohamed El Arabi-Serghini (voz arabe), Barbara Drążkowska (piano), José "Fity" Carrillo (guitarra), David Moñiz (violín), Chema Uriarte (percusión).
Producer: Creaciones Artísticas Dunas.
Premiere: Esplanade – Theatres on the Bay (Singapore), Oct. 2009.

モロッコ系のルーツを持つベルギーのダンサー/振付家 Sidi Larbi Cherkaoui と フラメンコの文脈で活動し自身のカンパニーも主宰する María Pagés の共演した作品。 1年前に同じハコで上演した Cherkaoui の Sutra [鑑賞メモ] と同じく、 この Dunas も評判が良い作品だったので [The Guardian のレビュー]、 観たいと思っていた作品だった。

タイトルは砂丘 (dune) から取られているが、砂漠の砂丘のようなベージュ色をした柔らかく伸縮する大きな半透明の布を使った、 そしてそれに映し出される影を巧みに使った演出がとても印象的な舞台だった。 フライヤのにも使われた左右の布の中から布越しに2人が近づこうとするオープニングや、 前半にあった、三重に垂らした布の後ろで後方から光を当てて三重の影が踊るかのような演出。 そして、最後の二人が一つの布に包まれて布の下に消えていくところまで。 そんな布と光による幻想的な演出が美しかった。 影では無いが、まるで砂絵アニメーションのように Cherkaoui がライブで音楽に合わせて砂絵を描いて変化させていく様子を大写しした演出も、手のダンスのようで面白かった。

もちろん、フラメンコダンサーである María Pagés の見所も各所に作ってあった。 背景に大きくうつされた拍手する手の下で踊るようなスタイリッシュな演出もカッコよかったが、 Pagés に打ちのめされるかのように少々コミカルに周囲でのたうち回る Cherkaoui の動きも、 まるで Pagés の凛々しさを引き立てるかのよう。 スマートに女性ダンサーをサポートするのと違う引き立て方だな、と。 もちろん、モロッコ系である Cherkaoui とスペインの Pagés という二人のバックグラウンドから、 地中海を挟んだヨーロッパと北アフリカの関係も暗示させ、深読みしたくなる所もあったが、 しかし、Akram Khan の Zero Degrees [鑑賞メモ] のような明示的なものではなく、 むしろ舞台をまとめ上げる枠組みという感もあった。

フラメンコの歌手だけでなくアラブの歌手もフィーチャーした生演奏の音楽も期待していた。 メリスマの効いた歌唱やハンドクラップ、フレームドラムの音が楽しめたが、 ピアノなども使いセミクラシックな展開になるという時も。 もっとルーツ色濃い Accords Croisés レーベルあたりがリリースしている汎地中海的な音楽を期待していたところもあり、 少々ロマンチックに過ぎるように感じてしまった。