イギリスの近現代美術のコレクションを所蔵し Tate Modern などの美術館を運営する外郭公共団体 Tate のコレクションに基づく「ヌード」をテーマにした美術展。 実際に通して観るとエロティシズムを感じるものは多くなく、むしろ、裸体表現を通して19世紀以降の近現代美術史を見せるような、見応えのある展覧会でした。 19世紀から20世紀にかけての西洋近現代美術史というと、MoMA や Guggenheim が示すような、 19世紀後半のフランス印象派 (French Impressionists) に始まり、戦間期はフランスとニューヨークの前衛を経て、戦後はアメリカのモダニズムへというのがメインストリームですが、 さすが Tate ということでイギリスの作家の作品が多い構成。 もちろん、独自の展開を見せるというよりメインストリームへの目配せもあり同時代性を示すような構成でしたが、イギリスの作家はあまり馴染みが無いこともあり、新鮮に感じられました。
今回の展覧会の目玉作品 Auguste Rodin: “Le baiser [The kiss]” (1901-4) も興味深く観ましたが、 やはり、最も興味深く観たのは、戦間期モダニズムに焦点を当てた「3 モダン・ヌード The Modern Nude」。 観る機会のあまり無い Wyndham Lewis, David Bomberg や William Roberts などモダニズム運動 Vorticism 界隈の作品を観ることができました。 David Bomberg: “The Mud Bath” (1914) など抽象絵画でしたし、 Wyndham Lews: “Indian Dance” (1912) や William Roberts: “Athletes exercising in a gymnasium” (1920) にしても 裸体表現というより抽象化された身体表現に近いものがありましたが、造形的なアプローチが面白いです。
あと、現代的なコンセプチャルな写真作品を中心に構成された「8 儚き身体 Vulnerable Budy」のコーナーも好みでした。 Cindy Sherman のセルフポートレート [鑑賞メモ] や YBA (Young British Artists) の Tracey Emin [鑑賞メモ] のような有名な作家だけでなく、初見の作家も興味深かった。 やはり YBA 文脈の Fiona Banner の文字だけでヌードを記した “Split Nude” は YBAというよりむしろ Barbara Kruger や Jenny Holter といったNYのポストモダンに近いものを感じました。 また、Dineke Dijkstra の出産間も無い母子のポートレート (1994) は、被写体選択のセンスもありますが、タイポロジーを思わせる抑制された演出の写真が好みで、他の作品も観て観てみたくなりました。