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Review: Compagnie DCA - Philippe Decouflé: Nouvelles Pieces Courtes @ 彩の国さいたま芸術劇場 (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2018/07/08
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
2018/06/30, 15:00-16:40.
Mise en scène et chorégraphie: Philippe Decouflé; Assitante chorégraphique: Alexandra Naudet
Musiques originales: Pierre Le Bourgeois - Peter Corser, Raphael Cruz et Violette Wanty (Duo), Cengiz Djengo Hartlap.
Avec: Flavien Bernezet, Alexandre Castres, Meritxell Checa Esteban, Julien Ferranti, Suzanne Soler, Violette Wanty.
Eclairages et régie générale: Begoña Garcia Navas; Conception vidéo et réalisation: Olivier Simola et Laurent Radanovic; Scénographie: Alban Ho Van, assisté d'Ariane Bromberger; Création costumes: Jean Malo, Laurence Chalou (Vivaldis), Assistés de Charlotte Coffinet et Peggy Housset.
1. Duo 『デュオ』 2. Le Trou [The Hole] 『穴』 3. Vivaldis 『ヴィヴァルディ』 4. Évolution [Evolution] 『進化』 R. 5. Voyage au Japon [A Journey to Japan] 『日本への旅』
Première: La Coursive - Scène Nationale de la Rochelle, 16 Mai 2017

最近は2年おき程度の頻度で来日している Cie DCA - Philippe Decouflé [鑑賞メモ]。 今回の来日での演目は新作短編集ということで、作風の異なる5編とインタリュード的なエアリアルの演技1つという構成。 もともと作風にバラエティショー的ながあるとはえいえ、全体としては少々見応えに欠けたが、 Decouflé のアイデアの引出の多様さを楽しむことができた。

最初の Duo は、 前回来日の Contact ではポップアイドルのように歌って踊った Violette Wanty と、 やはりカウンターテナーで歌った Julien Ferranti の2人が、 楽器を演奏しつつ、歌いつつ、踊るという作品。 (正確には、flute を差し出したり、upright piano を押し動かすもう一人の3人構成。) Julien は upright piano を弾きつつ、Violette は flute を弾きつつ。 アクロバティックなポジションで flute を吹くという技も見せつつ、 カバレット風の落ち着いた大人な雰囲気でまとめていたのも良かった。 サーカスでは、パフォーマー自ら歌い演奏することが少なくないけれども、 コンテンポラリーダンスでダンスと演奏と歌をここまで一体化させるというのも、さすが Decouflé らしい。 最近、歌手にダンスを踊らせる現代演出のオペラを続けて観たばかりだが [鑑賞メモ]、 コンテンポラリー・ダンスではダンサーにも歌や楽器演奏のスキルを求められることも増えていくのかもしれない。

続く Le Trou は、 Duo の二人が床に開いた穴から顔や手足を出しての、少しコミカルなパフォーマンス。 後半になると Decouflé が穴からせり上がるようにして登場。 スリット穴だらけのスーツから、まるで手品をするかのように手を出し入れする動きを見せた。

短編3作目は Vivaldis は、タイトル通り バロック後期18世紀初頭のヴェネチアの作曲家 Antonio Vivaldi を使ったダンス。 時に Découflé も加わったが、6人のダンサーが、 カラフルなニットのレオタードもしくはジャンプスーツのような衣装と飾りのある目出し帽というスタイルながら、 時にバレエスタジオにあるようなバーを用意し、バレエ的な動きを多用したダンスを繰り広げた。 衣装だけでなく、ループ状に動きを繋ぐかのようなコミカルな動きを見せたり、逆光でシルエットで見せたり、と Decouflé らしいセンスも感じたが、 クラシックの曲を使いバレエのイデオムを多用するという意外な面を見たようにも感じた。

短編4作目は、Évolution は、6人のダンサーによるライヴでビデオ撮影投影を駆使したパフォーマンス。 下着のような衣装で、複数設置されたカメラの前で踊り、映像投影とダンスを組み合わせて行く。 舞台背景を上下二段に割って、下は映像を投影せずにダンサーの背景とし、上段に平行移動するように映像を投影するというのが、基本パターン。 そこに live electronics を駆使した即興ライヴでディレイをかけたりループさせるかのように、過去の動きをスチルで固定したり。 違う場所での2人のダンスを映像上ではまるで組み合って踊っているように見せたり、と、精度の高い動きが出来ないと難しいトリッキーなこともして見せていた。

この後はインターリュード的に差し込まれた R とだけ示された Suzanne Soler によるエアリアルパフォーマンス。 低い位置で大きくスイングしながら、フロアの男性ダンサーと半ば組むかのように踊るというもの。 少し暗めで色を抑えた演出で、舞台全面に半透明のスクリーンを置いて、ライヴの映像投影とも組み合わせて幻想的。 やはり、Decouflé の作品ではエアリアルは不可欠だな、と。

最後は、Voyage au Japon。 度々来日している Decouflé や Cie DCA のメンバーたちの日本の印象を、 客観的にではなくあくまで主観的な印象のままに、セットや小道具も多めに、少々コミカルに作品化した作品。 音楽に bossa nova が多用されたりと、ジャポニズムというより、私的な印象を重視しているように感じられた。 この作品では Decouflé も全面的に参加して、白い襦袢に赤いヒールと和傘で少々セクシーな女装の後ろ姿も見せた。 全体的にキッチュなセンスだったが、舞台全面のスクリーンへの投影も合わせて、早足で行き交う雑踏の人々を描いば場面など、スタイリッシュに見せるときもあった。

作風が様々で一概に比べがたいが、最も気に入ったのは最初の Duo。 意外にクラシカルな面を見せた Vivaldis も良かった。

終演後に Decouflé のトークがあったのだが、演出意図を訊くような質問ははぐらかしがち。 しかし、Vivaldis はオーソドックスなダンスを好んだ母に向けられた作品で、衣装デザインも母の部屋のイメージから来ていることなど、 いい話も聞くことができた。