世田谷パブリックシアターが2003年から継続しているシリーズ 現代能楽集 第9弾はかぐや姫の話で知られる『竹取』。 現代能楽集は観たことがなかったのですが、カンパニーデラシネラの 小野寺 修二 [鑑賞メモ] が構成・演出を手掛けるということで、観てみました。
小野寺 修二なのでもっと物語る演出になるかと思いきや、イメージを重視した演出でした。 台詞もあれどイメージを膨らます契機という程度で、物語ももはや断片的でした。 小林 聡美 と 貫地谷 しほり の女優枠2人がいることもあってか、ダンスやマイムの身体の動きの面白さで見せるというより、 むしろオブジェクトのマニピュレーションとそれによる空間操作を意識した演出。 古川 の演奏する打楽器の他は舞台にあるのは、全体を天井から床に向かって砂袋で可動なように張られた何本もの伸縮ロープのみ。 このロープの配置の変更と、人の動きとライティングで、次々と空間を変容させていくアイデアは、さすがです。 片面畳片面障子のパネル2枚のみを使い、俳優たちがそれを立てたり寝かせたりスライドさせながら動かしつつ、その上を小林聡美が歩いていくことで、大屋敷を表現したり。 (これは、Simon McBurney: Shun Kin [鑑賞メモ] を思い出しました。) 最近、LEDのポータブル照明を使った演出を多用していますが、 薄布への影や光を使った演出、水の波紋への光の反射を使った演出など、光使いも巧くなったな、と。
その一方でで、女優2人はオーラあるんだろうなと予想していたのですが、むしろそれを消すような演出にも感じました。 登場人物のキャラ立ちの面白さとか、そういう印象がほとんど残りませんでした。 また、台詞にしても、現代的な台詞から、落語的なものから狂言の詞や謡まで、音楽も打楽器を中心にした抽象的なものから、西洋的な歌まで。 あえて多様にしたのだとは思うのですが、多様性を生かすというよりバラバラに感じられてしまいました。 全体としては楽しめたのですが、そんな引っかかりも感じてしまった舞台でした。