マイムをバックグラウンドに持つ 小野寺 修二 (ex-水と油) とバレーダンサー 首藤 康之 とのコラボレーション。 5年前に観た『シレンシオ』 (東京芸術劇場, 2013) はさほどでは無かったが [鑑賞メモ]、 最近の 小野寺 修二 はとても楽しめているので [鑑賞メモ]、 今度はどうなるだろうという興味で足を運んでみた。 今回も明確な物語無く短いスケッチを連ねていくような作品だったが、 『シレンシオ』のような抽象的なテーマではなく、クラシカルな犯罪映画にありそうなイメージを繋ぎ合わせたよう。 それも、戦間期のノワール映画から1970年代の日本の刑事物の映画まで、時代は広めに撮られているように感じられた。
タイトルにあるように舞台3箇所に斜面が設けられ、斜面上での不安定な動きと犯罪映画のサスペンス感を繋ぐのかと期待したのだけど、 あまり斜面を活かせていないようにも感じられてしまった。 舞台上手の急な斜面は、そこを駆け上るような動きも多用していたし、小野寺が椅子を置いて座ろうとする場面など印象にも残った。 しかし、舞台奥にあった下手から上手へ下る斜面などは出入りのスロープという程度だったし、 舞台下手のテーブルを置かれていた小さな斜面など斜面であることを生かした演出は記憶に残らなかった。 今回は『シレンシオ』でのような女優枠が無く、身体能力の高い人たちによるパフォーマンスだっただけに、そこは残念だった。
首藤が手に色を変化させられるハンディのLED照明を持ち、自身の顔や体を照らしながら踊る場面も印象的だった。 しかし、『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 (KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ, 2017) [鑑賞メモ] で観られたような電子ガジェット使いはその程度。 マイムらしくドアや椅子を動かしながらのパフォーマンスも多用されていたのだけど、 狭い舞台のせいもあるのか、時空間を変容させているのではなく、単に動かしているだけに見えてしまうことが多かった。 そういう所も少々物足りなく感じた。
全体としては『シレンシオ』よりも動きが面白く楽しめたように思うのだけど、 不完全燃焼したような気分になってしまった公演だった。少々期待のレベルを上げ過ぎただろうか。