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Review: 『ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男』 Bruno Munari: Quello delle Macchine Inutili @ 世田谷美術館 (デザイン展); 『アフリカ現代美術コレクションのすべて』 All of the African Contemporary Art Collection @ 世田谷美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/01/14
Bruno Munari: Quello delle Macchine Inutili
『ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男』
世田谷美術館
2018/11/17-2019/1/27 (月休;12/24,1/14開;12/25,12/29-1/3,1/15休), 10:00-18:00.

イタリア・ミラノを拠点に、戦間期に未来派の一人として活動を始め、戦後、美術作家としてだけでなく、デザイナ、絵本作家としても活動した Bruno Munari の回顧展です。 戦間期モダニズムが自分の好みということもあるかもしれませんが、 このようなキャリアの作家の場合、戦間期に創造性のピークがあって戦後はその延長と感じられてしまうことも少なくありません。 しかし、Munari の場合は圧倒的に戦後の作品の方が面白く感じました。

1948年設立の具体芸術運動 Movimento Arte Concreta に参加していた頃の 絵画の地と図の関係、さらにはキャンパスと壁の関係すら反転させるような “Negativo Positivo” 「陰と陽」シリーズや、 ページ内の切り抜きや半透明の紙のページを使って図像のレイヤの面白さを生かした絵本など、 マスターピースを思わせるものがありました。

未来派時代のキネティック・アートというかモビール様の作品 “Macchine inutili” 「役に立たない機械」よりも、 その戦後の展開とも言える “Travel Sculpture” 「旅行のための彫刻」のような作品の方が興味深く思いました。 また、スライドにプラスチックの小片を挟み込み偏光を使ったスライドプロジェクタで投影する “Polarised Projection” 「偏光の映写」や、 製品化直後のPPC (Plain Paper Copier) 複写機を使った “Xerografia Originale” 「オリジナルのゼログラフィア」など、 メディア・アート的な世界にも踏み込んでいたことにも気付かされました。

余談ですが、この展覧会のタイトルは3年前の 『スペインの彫刻家 フリオ・ゴンザレス——ピカソに鉄彫刻を教えた男』 [鑑賞メモ] を連想させます。 同じ学芸員が担当した展覧会だったりするのでしょうか。

『アフリカ現代美術コレクションのすべて』
All of the African Contemporary Art Collectio
世田谷美術館
2018/11/3-2019/4/7 (月休;12/24,1/14,2/11開;12/25,12/29-1/3,1/15,2/12休), 10:00-18:00.
Saka Acquaye, Anapa, Sokari Douglas Camp, Moustapha Dimé, El Anatsui, Ablade Glover, Abdoulaye Konaté, Issa Samb, Pascale Marthine Tayou.

世田谷美術館にコレクションされているアフリカ現代美術の作品をお披露目するコレクション展。 El Anatsui [鑑賞メモ] をはじめ アフリカの現代美術を観る機会はそれなりにありましたが、 そもそも、世田谷美術館にこんなコレクションがあったということが驚きでした。 1989年の Saka Acquaye の個展、1995年の展覧会『インサイド・ストーリー 同時代のアフリカ美術』をきっかけに収蔵したとのこと。

世界的な現代美術ブームとなる2000年代以前、1980年代末から1990年代半ばにかけての作品で、 コンセプチャルなインスタレーションというより、平面もしくは立体の造形の面白さへのウェイトが まだ重かった時代の作品に感じられましたが、 それはそれで味わい深いものがありました。 『インサイド・ストーリー』展で展示された床屋の看板や服屋のマネキンとかのストリート・アートもありました。 展覧会を一過性のイベントとせずにコレクションしておくことの重要性を実感させる展覧会でした。