戦間期の1930年代から戦後1960年代にかけて活動したアメリカ・ニューヨークの美術作家 Joseph Cornell の コラージュ作品、「箱」として知られるアッサンブラージュ作品、実験的な映画作品など国内美術館の収蔵作品を一挙に集めた展覧会です。 Cornell の箱のアッサンブラージュ作品は国内にもコレクションがそれなりにあって観る機会はあったけれども、 これだけまとめて観たのは初めて。
アメリカにおけるシュールレアリズムの文脈に乗る作家ですが、戦後芸術のトレンドに乗らずに独自の作風で作品を作り続けていたと知られますが、 こうしてまとめて見ると、1950年代には抽象表現主義的なテクスチャ感が現れ、1960年代にはコラージュにポップアートに通じる素材が使われるなど、時代から孤立していたわけで無かったと気づかされました。
コラージュ作品をまとめて観たのは初めてでしたが、 その初期1940年代のものなど Max Ernst の影響が感じられるとはいえ、本業だった雑誌デザインに近いものがあり、 シュルレアリズム的な悪夢感が感じられないのも特徴でしょうか。 鳥をモチーフにした箱のアッサンブラージュ作品にしても、 バレリーナと交流がありその写真をもらって作成したコラージュ作品も、私的に可愛らしく美しいものを集めて愛でているような。 また、モンタージュに基づく映像作品でも、通りで遊ぶ子供たちの映像が多用されていて、その視線にも優しいもの。 そんな毒気の無さも Cornell の個性なのだろうと感じた展覧会でした。
DIC川村記念美術館まで足を運んだのも、久しぶり。 この美術館は抽象表現主義を中心とした20世紀美術のコレクションも充実してるのですが、 緑に包まれたガラス張りのギャラリーに展示された Cy Twombly [鑑賞メモ] の部屋や、 その下の薄暗い瞑想的な Mark Rothko [鑑賞メモ] も久々に堪能しました。 正直に言えば、Cornell より Twombly や Rothko の方が好みです。