梅田 宏明 は2000年代に入ってコンテンポラリーダンスだけでなくメディアアート的な現代美術の文脈でも活動するダンサー/振付家です。 NTT ICC などでインスタレーション作品を観たことはあれど [鑑賞メモ]、ダンス作品は観たことはありませんでした。 そんなところで、スチル写真を観て少々気になっていたYCAM委嘱作品『Holistic Strata』が都内で再演されるということで、足を運んでみました。
前半は、梅田のダンス・メソッド「Kinetic Force Method」に基づく新作2作品で、 人間的というよりロボット、それも、古典的なカクカクした動きではなく滑らかにPID制御かけているような動きが特徴的でした。 『Movement Research - slipstream』はバレエやコンテンポラリーダンスをバックグラウンドに持つダンサー、 『vibrance』はストリートダンス、ヒップホップダンスをバックグラウンドに持つダンサーということで、 同じメソッドでも身体の癖 (ストリートダンスではオーバーシュート気味な動きになる) が感じられました。 しかし、あえて空間的な演出を抑えて人の動きに焦点を当てたようですが、 ダンサーの立ち位置や移動、客席方向を意識したような動きの方向性に、単調さ、変化の乏しさを感じてしまいました。
後半は『Holistic Strata』の再演でした。 照明を落とした暗い舞台に白い光の点が砂嵐のように吹き荒れる中、ミニマリスティックな electronica の音楽に合わせて踊ります。 舞台両脇からのダンサーへの投影と、正面上方からの背景の投影に分けていて、 ダンサーの黒い影の背景に光の点が渦巻いたり、ダンサーだけに光の点が蠢いたりと、様々な組み合わせを作り出していました。 これは、さすがに、スチル写真やビデオには無い見応えを感じました。 しかし、移動しているダンサーに追従して投影することに技術的な制約もあるのかもしれませんが、 ダンサーは基本的に足元を動かさず移動しないため、前半同様、空間的な単調さ、変化の乏しさを感じてしまいました。
開演前の時間、劇場ロビーを使って、VRインスタレーションのプロトタイプを展示がありました。 最近はVRを少し意識して観るようにしているので [関連する鑑賞メモ]、これもこの公演に足を運んだ理由の一つでした。 『Holistic Strata』にも似た、暗闇の中に白い光のチューブや粒が渦巻く抽象的な音響映像でした。 最近観た他のVR作品に比べるとまだまだ習作という感じでしたが、2本目の渦巻く球体のような方が好みでした。
後半の Holistic Strata などビジュアルも美しかったのです、 人の動き、演技というより舞台空間の使い方、構成という今の自分の興味と見事にすれ違った感もあった公演でした。