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Review: Apichatpong Weerasethakul: Fever Room @ 東京芸術劇場 プレイハウス (映像/舞台作品)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/07/15
Apichatpong Weerasethakul
Fever Room
東京芸術劇場 プレイハウス
2019/06/30, 12:30-14:00.
Director & Editor: Apichatpong Weerasethakul.
Cast: Jenjira Pongpas Widner, Banlop Lomnoi, Teenagers of Nabua.
Production Manager: Sompot Chidgasornpongse; Projection, Visual designer: Rueangrit Suntisuk; Lighting: Pornpan Arayaveerasid; Sound Designer: Akritchalerm Kalayanamitr, Koichi Shimizu [清水 宏一]; Visual Assistant: Piti Boonsom; Lighting Assistant: Voratorn Peerapongpan; Cinematographer: Chatchai Suban; Camera Assistant: Thanayos Roopkhajorn; Sound Editor: Chalermrat Kaweewattana.
Production: Kick the Machine Films.
Premiere: 4 September 2015, Asia Culture Center Theater, Gwangju, South Korea.

現代美術の文脈でのビデオインスタレーション作品や映画作品で知られるタイの映像作家 Apichatpong Weerasethakul [鑑賞メモ] による舞台作品です。 2017年のTPAM (Performing Arts Meeting in Yokohama) で日本初演されていますが、その際は年度末繁忙期で観られず。 劇場を使ってどんな作品を作ったのだろうという興味もあって、観に行ってみました。

会場はプレイハウスという東京芸術劇場で一番大きな劇場ですが、観客は客席ではなく舞台上に案内され、 幕は下りた状態で、客席に向かって座らされます。 そして、幕側と左右の三面のスクリーンを使った、マルチスクリーンの映像作品の上映が始まります。 Weerasethakul らしく、ドラマ映画ではなく淡々とタイ北東部らしき風景とそこの洞窟を巡る漠としたイメージが投影されます。

雷雨の場面となるとビデオ上映が終わり、雷鳴が轟く中、幕が上がります。 客席側はスモークで満たされ、月のような少し欠けた明かりも見える中、 劇場の舞台照明システムを使ったライトショーが始まります。 強烈な光が舞台上の観客に向けられるので、大音響と光の軌跡に包まれるよう。 最初は細い線が多数旋回するように動くのですが、次第に光の面が回転し上下するように動きます。 劇場のスモークはムラがあるので、光で切り出されて雲海のようにも見えます。 また、ライブで上演しているのか映像投影なのか観ているだけでは判然としませんでしたが、 そのスモークの中で影絵のように人影が蠢いたり。 そんなライトショーをひとしきり観た後、再び幕が下りて、短い映像を右手のスクリーンに投影して上演は終わります。

前半はマルチスクリーンのビデオインスタレーションのために劇場を使わなくても、と思いもしましたが、 後半のライトショーで、これであれば劇場を使う理由は腑に落ちました。 しかし、前半と後半が違い過ぎて、この2者を合わせる意味が掴めませんでした。 後半の体験は確かに強烈ではあるのですが、 ライトショー、光のインスタレーションとして独自性を強く出すのはハードルが高そうです。 例えば、Guillaume Marmin & Philippe Gordiani: Timée [鑑賞メモ] をスケールアップしたよう、 と思いつつ体験していました。