KAAT神奈川芸術劇場のキッズ・プログラムの1つとして公演が行われた、 スペイン・バレンシア地方 (Valencia, ES) を拠点に活動するカンパニー Ponten Pie による、 2〜5歳の子供向けに作られた演劇作品です。 ほとんど予備知識も無く、大人が一人で観に行くのも少々憚れたのですが、 写真やティーザー動画に惹かれて足を運んでみました。
舞台は海底に沈んで半ば砂地に埋もれてた、もしくは、打ち上げられて半ば砂地に埋もれたガレオン船 (西洋近世の木造帆船) でしょうか。 水を張ったような青い薄布を被せた、その下には砂と見立てたコルクチップを厚く敷き詰めた幅3m奥行き6m程度の長方形の舞台を中央に、 砂地から突き出た船尾楼甲板の一部のような客席が取り囲こんでいました。 船尾から入ってきた女性パフォーマーが、セリフを用いず、 送風機も使って布を煽ったり、コルクチップの中から物を掘り出したり、吹き上げる「砂」と戯れたり。 最後に舳先の部分を頭部大に縮小した模型を被って砂の上を荒れ狂う夜の海を進む帆船を模したような動きをしたあと、 砂の中にうっすら顔だけを出して横たわり、客が退場する間もそのまま、 カーテンコールのようなものも無いままに静かにパフォーマンスを終えました。 女性は難破した船の乗客の亡霊、もしくは、積み荷の女神像だったのでしょうか、そんなことを思わせたエンディングでした。
客席から手が届きそうなほど舞台も狭くパフォーマーも一人というこぢんまりした舞台でしたが、 セリフを用いずに人形は用いないものの物を使って連想でイメージをつなげていくようなパフォーマンスは、 Philippe Genty [鑑賞メモ] を子供向けにしたようでした。 特に、大きな布を波打たせる動きは、夜の嵐の場面で舳先の模型に小さな照明を仕込んでいた所など、近い演出を感じました。 最近観て Philippe Genty を連想させた舞台作品に Dimitris Papaioannou の The Great Tamer があったわけですが [鑑賞メモ]、 それとは Genty を挟んで逆の方向性 (大人向け) を持っているようで、 ラストの埋もれた死体のイメージから遡って自由連想的にイメージを繋げるような構成や、 地中/砂の中から掘り出すイメージの多用など、思いのほか共通する点が多かったというのも、興味深く感じました。