1980年代から活動を初め、1990年代に YBA (Young British Artists) に 近い文脈 (世代的には一回り上ですが) で注目されるようになった イギリスの現代美術作家 Julian Opie の個展です。 日本での美術館規模の個展は2008年の水戸芸術館以来でしょうか [鑑賞メモ]。 回顧展ではなく、2018-19制作の新作展です。
新作といっても、ピクトグラムのように簡略化された描線とフラットな色面で描く作風は相変わらず。 アクリル板や自動車塗装されたアルミによる看板のような素材のものから、 御影石の彫像やブロンズ像、液晶やLEDのディスプレイを使ったアニメーションまで、多彩なメディア展開をしていました。 街を行き交う人々やジョギングする人々を真横から捉えた作品が多く、 スチルのイメージはもちろん、小走りのピョコピョコした動きなど、可愛らしい印象です。 単純化された描線とはいえ、ヘッドホンなどのアイテム、Tシャツや刺青の柄など、人物を特徴付ける部分だけ解像度を上げている所も面白く感じられました。
アクリル板の厚みのような凹凸はあれどのっぺりとしたイラスト的な平面作品や 「液晶絵画」的なアニメーション [関連する鑑賞メモ] という印象が強い Opie けに、 平面作品での Opie らしさをそのままに、(黒塗りですが) ブロンズの女性の立像や動物 (ひつじ) の御影石像といったある意味オーソドックスなメディアで作品化しているところに、興味を引かれました。