秋の三茶de大道芸に合わせて 世田谷パブリックシアターで開催されるコンテンポラリー・サーカス公演。 今年は Raphaëlle Boitel 率いるフランスのカンパニー Cie l'Oublié(e) の初来日です。 度々来日している Camille Boitel [鑑賞メモ] の妹にあたる Raphaëlle Boitel は、 l’Ecole Nationale des Arts du Cirque Fratellini で学んだ後、 James Thierrée [関連する鑑賞メモ] や Cie 111 / Aurélien Bory でサーカス・アーティストとして活動し、 2012年に自身のカンパニー Cie L’Oublié(e) を設立しています。 そんなバックグラウンドはもちろん、近年はオペラの演出も手がけているとのことで、期待して足を運びました。
ディストピアに落ちた3人の天使 (女性パフォーマーの3人) が天に逃れようとする様を、 アクロバット的なダンスとエアリアルで描いたかのような1時間余の作品でした。 ハンガーに吊るされたコートを着たて操られているようなダンスに始まり、 淡々んと器械のように行き交う人々のダンス、 そして、男女の操られたロマンスと禁じられた自発的なロマンスを演じるかのようなマイムで、ディストピアを描いていきます。
そんなディストピアからの脱出の試みの表現はエアリアルで。 吊るしただけで固定されていないチャイニーズポールで失敗した脱出を演じたり。 特に象徴的な道具は吊るすためのトラスを付けた黒く塗られた梯子。 梯子が水平になるよう真ん中から吊るし、片側から押し上げて反対側に乗ったパフォーマーに動くスポットライトを追わ背たり。 水平な梯子を低い位置で回して、ふわりと浮くようなエアリアルを見せたり。 トラペーズやティッシュのようなわかりやすい技を使わなかったのが、良かった。 そして、ついに梯子から天への脱出で終わります。
そんな演技を、衣装も黒とモノトーンで、最低限の装置ただけの剥き出しの舞台の上で、暗い中、スポット的な照明とスモークを駆使した演出で見せていきます。 特に、脱出の場面ではスモークの中や上でのエアリアルとなり、スポット的な照明は希望の灯で、雲の上のような下の見えない高さで演じているかのよう。 そんなミニマリスティックな演出ながら幻想的なビジュアルが大変に楽しめた舞台でした。