最初期1990年代の《エレベーター・ガール》から、 2016年以降に取り組んでいる写真《女神と男神が桃の木の下で別れる》や、 2019年の「モバイル・シアター・プロジェクト」と呼んでいるマシンを使ったインスタレーション《神話機械》、 演劇プロジェクトの資料を含む、やなぎみわ の今までの活動を辿る回顧展的な個展です。 個展は10年はぶりということで、 最近は演劇プロジェクトを観ることはあれど [鑑賞メモ]、 美術展で作品を観るのは企画展の中で1作品を観る程度。 自分が個展で観るのはひょっとして1997年の水戸芸術館のクリテリオム [鑑賞メモ] 以来でしょうか。
物語的な時間を感じさせない《エレベーター・ガール》は好きだったのですが、 コンセプチャルながらナラティブな演出写真になった《マイ・グランドマザーズ》や《フェアリー・テール》は今から振り返ると過渡期だったのかも知れません。 もともと演劇的な資質を持っていたのか、演出写真よりも演劇プロジェクトでそそれが生きているように感じました。 「モバイル・シアター・プロジェクト」は新作の《神話機械》は高専や高校の生徒と制作した手作り感溢れるロボットを使ったインスタレーション作品。 常に動態で展示しておらず「無人上演」として、時々ロボットが録音されたセリフを流しながら動く様子を見せていましたが、 Heiner Müller の日本語訳テキストとの関係はさておき、 ユーモラスな一方不気味さもあって人が演じない分だけクールで突き放したようにも感じられた所が好みでした。 その一方で、人を写した演出写真ではなく、福島の桃を夜に撮影した《女神と男神が桃の木の下で別れる》については、 画面の中でのナラティブさが後退し過ぎて、意図を掴みかねました。
この展覧会は11月29, 30日にライブ・パフォーマンスがありました。 ということで、ライブ・パフォーマンスに日程を合わせ、その昼に展覧会を観たのでした。
演劇プロジェクトではなく、展覧会中のライブパフォーマンスとしての上演ということで、 演劇色薄いパフォーマンスを予想していました。 しかし、小劇場や商業演劇を思わせる口調や演技を伴う熱演による一人芝居でした。 やなぎみわ演劇プロジェクトでも演劇の演出は結構ベタなものなので、後から思えば意外でもなかったのですが、 昼に先に無人公演を観ていて、その突き放したクールさを気に入っていたので、 演技に最後まで違和感を覚えて演じられた世界に入り込めないまま終わってしまいました。 こういう時もあるでしょうか。