元-水と油の小野寺 修二のセルフユニットとして2008年に設立されたカンパニーデラシネラですが、 2019年4月に4人のパフォーマーからなるカンパニーとして新たなスタートを切っています。 小野寺 の振付作品としては去年3月に『WAITING FOR THE SIGNAL! 〔信号待ち!〕』を観ていますが [鑑賞メモ]、 カンパニーデラシネラとしては『椿姫』 [鑑賞メモ] 以来2年ぶり、新体制になってからは初めて観ます。
小野寺の振付作品はマイムの身体表現をベースとしたフィジカルシアターで、 水と油 ではセリフを排していましたが、 旧体制のカンパニーデラシネラでは次第にセリフを排さない演出に変わってきていました。 しかし、この新体制での作品ではセリフを排した演出になっていました。 今回の作品は、全体としてはっきりとした筋の物語が無く、 断片的なスケッチを繋いでいくところはマイムシアターによくある構成でしたが、 身体の動きを使ってミニマリスティックな舞台に空間を描いていくようなマイムシアターに典型的な演出には収まりきらないものを感じました。
20世紀前半くらいのモダンながらアンティークな雰囲気も感じさせる 公共建築の一階ロビー、洋風のアパルトマン、もしくは、商業建築の一室とも取れそうな空間が、 舞台美術を使って設定されていました。 そして、空間を無からマイムで描くのではなく、舞台装置で設定された空間の意味付けを変え、 場面を重層的に編集するかのように、マイムが使われていました。 例えば、舞台上手のドアの前の空間は、大庭にとっては恋人の家の前であり、 崎山にとってはアパルトマンの自室内であり、藤田にとっては暴風雨の中向かう公共建築や店舗への道であり、 それらの場面が時には同時にほとんど干渉せずに並行して、 もしくは、ドアの内外が折り返されてどちらも手前にあるかのように、演じられていました。
そんな演技で意味付けられた様々な場面の切替、変容や並行して展開する場面の関係付けには、 今までのように、椅子や机の移動、もしくは、鞄のようなキーとなる小道具も使われていました。 しかし、照明による場面の文節や影を使った場面の関係付け、 音をキーとした場面の関係付けなど、照明や音を使った演出が印象に残りました。 特に、美容室のドライヤーの音に庭の芝刈り機の音を関係づけるような所は、面白く感じました。
大きな話の流れが感じられない細かいスケッチの連続のような展開は、 捉えどころなさも感じて、途中、集中が切れかけた時もありました。 しかし、その一方で、場面を重層的に編集していくようなアイデア溢れる演出については、 随所で新鮮に感じられ、興味深く観ることもできました。