2016年に『ロミオとジュリエット』を再見して以来 [鑑賞メモ]、 自分の中で再評価が進んでいるカンパニーデラシネラ。 若手育成目的で2015-17年に制作してきた「白い劇場シリーズ」の二作が再演されたので、 2016年初演の第二弾『椿姫』を観てきました。今回が初見です。 物語ることも重視しセリフも多用した演出で、身体表現を大きく取り入れた演劇とも言える作品。 ポータブルのプロジェクタも使った『WITHOUT SIGNAL! 〔信号がない!〕』 [鑑賞メモ] などに比べて、 演出のアイデアは控え目でしたが、椅子と一緒に踊るかのような動きや、机の周りでのパズルのように組み合わせた動きも相変わらず。 アルマンを中心に据えた不条理なユーモアを感じる演出も安定の面白さでした。
もちろん、オペラ La Traviata [鑑賞メモ] や バレエ Marguerite and Armand [鑑賞メモ] で有名な物語を どのように解釈するのかという興味も、足を運んでみた理由の一つ。 La Traviata の音楽を使ったりもしていましたが、 椿姫を中心に解釈するオペラやバレエとはかなり異なり、アルマン視点の解釈でした。 例えば、オペラでは省略される冒頭のマルグリットの遺品の競売場面などを丁寧に描き、 アルマンと別れるように父がマルグリットに告げる場面を最後の方に持って行き、 後に死に際して知ったかのような形の演出になっていたという所など、アルマンの視点を強く感じさせます。
カンパニーデラシネラに限らずマイムシアターでは主人公が不条理な状況に翻弄される様子をユーモアも含めて演じるものが少なからずあるわけですが、まさにアルマンは不条理に翻弄される男。 マルグリット役の他にも娼婦仲間というか分身に当たるような女性を計5名配することで、マルグリットは愛のため自己犠牲するような内面のある女性というより、 アルマンを翻弄する不条理な状況そのもののように感じられました。 小野寺 修二 が出演する作品であれば、不条理に翻弄される男アルマンはいかにも 小野寺 自身が演じそうな役ですが、 そんな役を 野坂 弘 が好演していました。
『椿姫』というとWilly Decker の演出したオペラ La Traviata のミニマリスティックな現代演出の印象も強く残っていて、 それに比べて見劣りするかもしれないという不安も見る前はありました。 しかし、良い意味で別物の、いかにもカンパニーデラシネラらしい舞台に仕上がっていました。