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Review: Tomoko Mukaiyama & Reinier van Brummelen: TWO - in transit Hara Museum (ビデオ/streaming)
2021/01/10
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
Tomoko Mukaiyama & Reinier van Brummelen
TWO - in transit Hara Museum
2021/01/02 00:00 - 2021/01/11 23:59 (JST), 42min.
コンセプト・映像 [Concept + Film]: 向井山 朋子 [Tomoko Mukaiyama], Reinier van Brummelen.
出演 [Performers]: 向井山 朋子 [Tomoko Mukaiyama], 森山 未來 [Mirai Moriyama].
撮影 [Filming]: Reinier van Brummelen.
技術監督: 遠藤 豊; カメラ: 丹澤 由棋, 三塚 比呂; 照明: 田代 弘明, 篠原 由樹, 原 裕太; サウンドエンジニア: 稲荷森 健, 大林 元, 堤田 祐史; 機材手配: 黒川 貴; Post production assistant: Reinier Zoutendijk.
使用楽器: Shigeru Kawai グランドピアノ SK-5L ほか; 衣装協力: Yohji Yamamoto.
演奏プログラム: Johann Sebastian Bach: Das Wohltemperiertes Klavier Prelude Nr 6 BWV 851 d-moll (1722); Joseph Haydn: Piano Sonata no.38 in F Major Hob.XVI 23 (1773); Louis Andriessen: Memory of Roses (1992); Yannis Kyriakides: La Mode (2017); Maurice Ravel: Piano Concerto in G (1931); Tomoko Mukaiyama: improvisation.
主催: 一般社団法人 マルタス [MULTUS]、向井山朋子ファンデーション [Tomoko Mukaiyama Foundation].
Vimeo URL: https://vimeo.com/ondemand/twointransitharamuseum

2021年1月11日をもって閉館する原美術館ですが [関連する鑑賞メモ]、 それに合わせ、期間限定で原美術館で撮影された音楽演奏とダンスに基づくビデオ作品が有料配信されました。 音楽演奏はダンスとのコラボレーションも多い 向井山 朋子 [鑑賞メモ]、 撮影は SUPER T : A Live と同じ Reinier van Brummelen [鑑賞メモ] です。 ダンスでコラボレーションするのは、俳優としても活動する 森山 未來 です。 予約が取れずに原美術館での最後の展覧会に足を運べなかったので、その代わりにこの映像作品を観ました。

奇を衒ったような編集、効果の類は抑え、自然光の差し込むギャラリーや夜のライティングで美しく浮かび上がる アール・デコの洋館を改装した美術館の空間自体を見せるかのような映像でした。 音楽やダンスもそれ自体を強く主張するというより、 約40分間映像を見入ることを促すよう建物に寄り添い視線を案内するかのように感じました。

色付いた庭木があったものの散っていなかったので撮影は秋でしょうか。 明るい日の差す晴れた昼間から日没後まで様々な時間帯を使って撮影されていました。 演奏に使われたのは、3階のレイノーの部屋とそこに上がる階段、1階の2つのギャラリーとその前の通路、 2階の 宮島 達男 の部屋や須田 悦弘の彫刻が置かれたダクトのあたり、1階と2階を繋ぐ階段など。 屋外は、正門から建物左側にあるギャラリーに面したニワト、 宮島 達男 の部屋の脇の扉から外に出ての屋上が使われていました。 2階のギャラリーや 奈良 美智 の部屋、 パフォーマンスの上演に使われることもあった中庭、中庭に面したカフェやホールは使われませんでした。

美術館としては閉館になるものの、建物が無くなってしまったわけでは無いですが、 オープンしたばかり1980年代の状態をよく残した空間を主に使っていたからでしょうか、 昔を観ているようでもあり、とても懐かしく感じられました。

自分が原美術館へ初めて足を運んだのはまだ中学生だった1982年頃。 当時はまだ中庭に面してカフェは無く、2階の展示室でビデオ上映会などを開催していました。 John Cage 関連のパフォーマンスの映像や Nam June Paik のヴィデオアートなど上映会が当初の目当てでしたが、 それをきっかけに度々足を運ぶ美術館となりました。 最も頻繁に足を運んだのは1990年代後半。 就職して金銭的にも余裕ができたこともあり、メンバーシップ〜賛助会員となって、 当時中庭を使ってメンバーシップ向けに開催されていたラウンドテーブルなどに入り浸っていました。 2000年代に入って次第に足が遠のいてしまいましたが、それでも足を運ばない年はありませんでした。 約40年にわたり通った、それも現代美術をよく観るようになった頃にお世話になった美術館でした。 そんなこともあって、この閉館に合わせての映像作品を観ていて、少々目頭が熱くなるものがありました。