ジャンルを越えた共演も多い flamenco ダンサー Israel Galván [鑑賞メモ] は、 スイス出身で現在はNYを拠点に free jazz/improv のピアノ奏者 Sylvie Courvoisier [鑑賞メモ] と コラボレーションを続けています。 Galván をタブラオで観てその音楽的な面白さに気付いて以来、 ぜひこのコラボレーションを観てみたいと思っていたところ、ついにこのコラボレーションが最新作で来日と発表。 期待していたのですが、COVID-19のために共演の Sylvie Couvoisier と Cory Smythe の来日が取り止め、 Israel Galván の来日となり、ミュージシャンは日本人ミュージシャンの代役が立てられることになりました。
舞台は 広い舞台のあちこちに置かれた様々な高さのタブラ (共鳴板) とグランドピアノ2台、 あとピアノの中身だけが1台。ライティングのみのかなりミニマリスティックな演出です。 Igor Stravinsky: Le Sacre du Printemps に基づく作品とはいえ、 Courvoisier はもちろん、Cory Smythe も半ば classical の文脈でも活動するものの Anthony Braxton のアンサンブルや Tyshawn Sorey のトリオなど jazz/improv の文脈で活動するミュージシャンのコラボレーション。 しかし、代役として選ばれた日本のミュージシャンは、演奏スタイルの異なる classical なミュージシャン。 というわけで、メインとなるピアノ2重奏に編曲された Le Sacre du Printemps の演奏も 2人とも譜めくりを付けての淡々と端正な演奏。 そんな演奏に付かず離れず、Galván も、の上でパソ (ステップ) を刻むパーカッシヴな音だけでなく、 シャッと足を擦るような音や、敷かれた石炭をジャリジャリと踏みしだく音などのテクスチャルな音も多用して、音を重ねていきます。 シューズの鋲を使う硬い音だけでなく、素足で踏み鳴らすような音、特に、舞台下の奈落の空間に響かせるような音を使ったのも印象的でした。 そんな Galván の出す音と 複雑なリズムを持つ Le Sacre du Printemps との相性は良さを楽しみました。
しかし、Cast-a-Net (2018) [Vimeo の映像] で聴かれるような即興を含めたインタラクションとなるとかなり大人しめで、 やはり、Sylvie Courvoisier & Cory Smythe で観たかったものです。 コンテンポラリーな jazz/improv のミュージシャンの代役にクラッシックのミュージシャンを使うのは、 コンテンポラリーなダンス作品でのダンサーの代役にクラッシックなバレエダンサーを使うようなものかもしれません。 とにかく Galván が来日できて公演ができた、というだけでも、ありがたいのですが。