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Review: Israel Galván + Niño de Elche @ Tablao Flamenco Garlochí (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2019/09/29
Tablao Flamenco Garlochí
2019/09/07, 17:30-20:00.
Israel Galván (baile), Niño de Elche (cante, toque).
Programa Entrantes: 1)Recitando de Eugenio Noel 2)Fantango Cubista 3)Bulerías de la máquina 4)Tango del Reloj 5)Alegrías del cuerno 6)Pasodoble del Gallina; Programa Postres: 1)Seguiriyas carbónicas 2)Martinetes de la verdad 3)Saeta de Marchena 4)Pregón del oro 5)Granainas del agua 6)Sevillanas sentadas

ジャンルを越えた共演も多い「異端児」とも言われる flamenco ダンサー Israel Galván [鑑賞メモ] の tablao (レストランや居酒屋にある flamenco の舞台) での公演です。 Galván は劇場を活動の場としており tablao で踊ることは滅多にない、ということもありますが、 tablao で flamenco が踊られる場の雰囲気を知る良い機会かと、足を運んでみました。

休憩を挟んで前半 (Programa Entrantes) 1時間、後半 (Programa Postres) 1時間の公演でした。 彩の国さいたま芸術劇場での公演同様、黒シャツ黒バンツに控えめな照明。 伴奏の Niño el Elche は guitarra はほとんど用いず cante のみ。 伝統的な歌い方というより、テキストの詠唱もあれば、倍音成分の多い overtone singing に近い歌い方を交えたり。 ヘッドセットマイクを用いてリヴァーブをかけるような時も。 Galván のダンスは足踏みで細かくビートを繰り出す抽象的な楽器演奏のよう。 後半の冒頭、粗い黒い砂 (おそらく石炭を砕いたもの) を約 1×0.5 m の長方形に敷き、その上で踊り出すと、 ザクザクジャリジャリジリジリと通常の flamenco にはないようなサワリのテクスチャが加わりました。 Niño の cante も合わさり、動きというよりも音響的にとても面白く感じられました。

店内の調度品や基本の照明は暖色系ですが、演出での舞台照明はむしろ青みががることが多く、対照的で、 Galván の動きが出すオーラ、響いてくる音もあって、舞台上に宇宙空間のような異空間が出現。 終演後に写真/動画を撮る時間を作ってくれるサービスこそタブラオらしいと思いましたが、 呑みながら jaleo (掛け声) をかけつつリラックスして楽しむつもりで臨んだのですが、 baile/cante が途絶えても jaleo する隙も無い緊張感溢れるパフォーマンスでした。 ステージ脇ですが近い席で、迫力はもちろん、息遣いや、砂を踏むジリッという細かな響きにも直に触れるよう。 むしろ彩の国さいたま芸術劇場で観たときより、その flamenco の「異端」さを実感できました。

このようなパフォーマンスを観ると、やはり他ジャンルとの共演が面白そうです。 キャンセルされた2016年来日公演の Akram Khan [関連する鑑賞メモ] とのコラボレーション Torobaka が観られなかったのは残念です。 しかし、今、一番観たい Israel Galván 関連プロジェクトといえば、なんといっても、Cast-a-Net [PDF] です。 Sylvie Courvoisier (piano), Israel Galván (danse), Evan Parker (saxophone ténor/soprano), Mark Feldman (violon), Ikue Mori (électronique) という顔触れで、ダンスの公演という free improv 色濃い音楽のライヴといった方が良い内容です [Sylvie Courvoisier, Ikue Mori の関連鑑賞メモ, Evan Parker の関連鑑賞メモ]。 去年8月の、おそらく Festival Les Jardins musicaux での約1時間のコンサートの様子が 約1時間の Couvoisier 公式の映像 [Vimeo] で観ることができます。これで来日してくれたら、と思わざるを得ません。