1980年代から舞台作品のコスチューム・デザインを手かげてきている ひびのこづえ の、 回顧展というよりむしろ最近の活動に焦点を当てた展覧会です。 彼女の関わった舞台をよく観てきているという程ではないのですが、 2010年代以降の造形を生かしたダンスとのコラボレーションを楽しんでいるので [鑑賞メモ]、 その興味もあって足を運びました。 しかし、風船など使った半ば舞台美術化した、衣装は着て踊られてこそ面白さが引き立つ、と再確認するような展覧会でもありました。
会期中の週末にパフォーマンスも3作品予定されていたのですが、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言中のため全て中止になってしまいました。 会場のあちこちに置かれた液晶モニタで公演の様子を上映していましたが、画面も小さく、鑑賞するというより、その様子を伺える程度でした。 そんな中では、展示している衣装を着て踊るアオイヤマダの映像を重ねて観ることができるよう 鈴木 一太郎 がAR (拡張現実) 化した《AR forest》が、 (パフォーマンス中止を受けて急遽制作したもののようでしたが、) 展示している衣装が踊り出すような面白さを感じることができました。
KAAT神奈川芸術劇場の企画によるアニュアルの現代美術展の2021年で取り上げられたのは 志村 信裕。 古書や家具へ映像を投影するインスタレーションを得意とする作家で、 グループ展で観る機会はありましたが [鑑賞メモ]、個展で観るのは初めてです。
サイトスペシフィックではなく抽象的なブラックボックスの中でのインスタレーションですが、 木漏れ日や湖面のような揺らめく光のインスタレーションは相変わらず。 中でも特に良かったのは、単色光の光源の投影とゆらめく光の動画を重ねて投影した作品でした。 木漏れ日を受けるように、ゆらめく光りに手を差し出すと、複数に別れ重なった影が生じます。 そんな光と影の相乗効果も美しく感じました。