例年5〜6組は選ばれる東京都現代美術館のアニュアルのグループ展ですが、今年は3組というか3名で、 出展作品は全て大スクリーンに投影するシングルチャネルのビデオ作品でした。 サブタイトルからして三題噺になっている企画かとも予想したのですが、関連はほとんど感じられず、 独立した3つの個展を観るようでした。
中で最も印象に残ったのは 潘 逸舟。 固定カメラ、モノクロで撮られた海の液晶絵画的な美しさと、その中で繰り広げられているパフォーマンスの不条理さのギャップが楽しめました。 一連の同一コンセプトのシングルチャネルの作品を組み合わせた空間構成もスタイリッシュ。 以前に観た時は [鑑賞メモ]、スタイリッシュながら掴みに欠けるように感じたのですが、今回は不条理に掴まれました。
3〜6月に企画展示室で開催した Mark Manders: The Absence of Mark Manders 『マーク・マンダース—マーク・マンダースの不在』 [鑑賞メモ] が新型コロナウイルス感染症 緊急事態宣言で会期短縮されたことを受け、 作品返却までの間、コレクション展示室の一部を使い、出展作品の一部を異なる形で再構成した展覧会です。 前の展覧会を観ているのでさすがに新鮮さはありませんでしたが、 不条理なクレイ・アニメーションの世界に迷い込んだような感覚を楽しみました。
1960年代から1970年代に演劇実験室・天井桟敷 (寺山修司)、状況劇場 (唐十郎) 周辺の アングラ演劇のグラフィックデザインなどを手掛けたことで知られる 横尾 忠則 の現在に至る仕事を辿る大規模な個展です。 1960年代から1970年代にかけてのポスターは、当時のカウンターカルチャーのグラフィック・デザインの一典型ということもあり、 デザイン史の中で位置付けられて観る機会もそれなりにありましたが、 デザインから絵画に軸足を移してからの活動はコレクション展などで断片的にしか観ていませんでした。 今回まとめて観ることで、Y字路という特にこだわったモチーフがあったのかと今更ながら気付かされました。 また、特に展覧会前半は、1970年前後のカウンターカルチャーが1980年代ポストモダンへと変容していく様子を辿って観ていくようでもありました。