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Review: 池内 晶子 『あるいは、地のちからをあつめて』 @ 府中市美術館 (美術館)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/02/27
Akiko Ikeuchi: Or Gathering the Energies of the Earth
府中市美術館
2021/12/18-2022/02/27 (月休;1/10開;12/29-1/3,1/11,2/24休), 10:00-17:00.

1990年代後半から現代アートの文脈で活動する 池内 晶子 の個展です。 といっても、自分が意識するようになったのは2010年代以降。 『MOTアニュアル2011—Nearest Faraway | 世界の深さのはかり方』 (東京都現代美術館, 2011) [鑑賞メモ] や 『19th DOMANI・明日展』 (国立新美術館, 2016-2017) [鑑賞メモ] で観て、 絹糸で作った構造の繊細なインスタレーションが印象に残っていました。

今回の個展は、 マケット、ドローイングなどの関連展示もありましたが、やはり、 絹糸を使ったインスタレーション《Knotted Thread》シリーズの サイトスペシフィックな新作6点 –– 展示室をフルに使っての3点、ガラスケース内のインスタレーション2点、あと、エントランスロビーの吹き抜けを使った作品1点 –– をメインに据えた展示でした。 素材の絹糸や結び目の数にも意味を持たせているようでしたが、実際に観ていると、 今まで行った時に全く意識しなかった美術館の建物の東西南北方向やその軸からのズレに気付かされるようなインスタレーションでした。

企画展示室1の作品《Knotted Thread-red-⌀1.4cm-⌀720cm》は、東西南北の軸で張られた糸から吊り下げられた錐体のような赤い絹糸の構造と床の円形 (実際は渦巻状とのこと) に這わされた赤絹糸を対比させた作品。 そのフラジャイルな構造は今まで観た作品に最も近いイメージのものもでした。 しかし、それ以外の作品は構造が疎となり、一見何も無いようにすら見えるというのも。 特に白の絹糸を南北に張ってそこに一筋の白 絹糸を垂らした 企画展示室2《Knotted Thread-h220cm(north-south)》は、 暗い展示室の中で一筋のささやかな煌めきを観るよう。 エントランスロビーの《Knotted Thread-white-22knots-north-south》は、 目を凝らして探して、やっと見つけられるほど。 そんなことろは、むしろ、内藤 礼 の作品 [鑑賞メモ] に近い物を感じました。 そのような、自身の感覚を研ぎ澄まされるような作品は、とても好みです。

14時から、インスタレーション作品の形状を変更するパフォーマンスというか公開制作があったのですが、 それほど広くもない展示室に長蛇の列という、新型コロナウイルス感染症が無くてもまともに鑑賞できる状況ではなかったので、 冒頭の10分ほど資料展示のプロジェクタ投影された映像で様子を確認する程度で、美術館を後にしました。