コンテンポラリーサーカスの文脈で活動する Jörg Müller [鑑賞メモ] の3年ぶりの来日は、 現代アートの文脈で活動するアニメーション作家 束芋 とのコラボレーションによる日仏共同製作の新作舞台作品。 束芋 のコンテンポラリーダンスとのコラボレーション 『錆からでた実』も以前にも観たことがありますが [鑑賞メモ]、 むしろ、Jörg Müller が関係したマルチディシプリナリーなコラボレーションという興味で足を運びました。
明確な区切りはありませんが、おおよそ3部構成。 まずは、Jörg Müller による数m四方はある大きな白い布を使ったオブジェクトマニピュレーションから始まりました。 服下に布を畳み入れ首元から四隅を出した状態で現れ、天井から下げた4本の細いワイヤーに四角を固定し、ワイヤーを引き動かすことで、布を動かします。 天井の滑車の音も微かに聞こえる中、白い光で浮かび上がる布が舞い踊る様は、静謐で幻想的。 さすが Jörg Müller らしいパフォーマスでした。
続いて、束芋のグロテスクなアニメーションに、Müller の身体を絡める様なパフォーマンス。 舞台の前方と後方を区切る、何箇所か出入りできるスリットの入った半透明のスクリーンを下げ、 そこに束芋らしい室内に家具や肉塊が静かに蠢く様な不気味なアニメーションなどを投影しつつ、 シーツをかぶった Müller がそれに絡みます。 さらに、身体を解剖するアニメーションを Müller の身体に直接投影したり。 最後は、アニメーションはさらに抽象化して蠢く縦の効果線になり、 スクリーンも前後に揺らめき、映像とノイズの轟音の中に 浮かび上がる Müller と 間宮 の二人の静かなアクロバットのようなシルエットを観るようでした。
Müller のオブジェクトマニピュレーションの時は束芋の存在感がなく (もしかしたら細やかなアニメーションが使われていたのかもしれませんが)、 束芋のアニメーションの中では Müller の身体は映像の中に埋もれがちで、 相乗効果が楽しめたという感じではありませんでした。 COVID-19による移動の制限で日仏間を行き来しての制作もままならないことを考えると、 致し方ないところもあるでしょうか。