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Review: 李 禹煥 Lee Ufan @ 国立新美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/09/25
Lee Ufan
国立新美術館 企画展示室1E
2022/08/10-2022/11/07 (火休), 10:00-18:00 (金土 -20:00)

韓国出身ながら1960年代後半に日本で本格的に制作を開始し「もの派」を代表的な作家として知られる 李 禹煥 (Lee Ufan) の大規模な個展です。 国立新美術館の開館15周年を記念して開催されています。 東京国立近代美術館や東京都現代美術館、東京オペラシティ アートギャラリーの常設展示で必ずのように展示されている作家ですし、 美術館規模の個展も観たことがありますが [鑑賞メモ 1, 2] が、 「もの派」前の作品から最近の大規模インスタレーションまで辿ることができる、見応えのある展覧会でした。

最初期「もの派」以前の蛍光色のペインティングを導入に、 前半は〈関係項〉シリーズなどの立体作品、 後半は〈点より〉、〈線より〉に始まる絵画作品という構成でした。 立体作品の前半の中では、もちろん空間に余白の多く岩や鉄板などを配置する作品も良いのですが、 コレクション展などではまず観られない近年の海外での石や土を敷き詰めた インスタレーションの再制作を4点(うち1点は屋外)が、やはり興味深いものがありました。 余白、間合いを意識した展示に反するようですが、 敷き詰められている玉砂利自身が余白でもあり、また、玉砂利なども敷いていない展示との〈関係項〉的なコントラストにもなっているように感じられました。

絵画作品の後半は、規則的なストロークの反復から、やがて混沌としたストロークで埋め尽くされた画面になり、 再び秩序を取り戻して、最低限のストロークでの表現に至る道筋を示すような展示でした。 さすが美術評論家として活動する作家だけあって、作家の制作意図を変遷を形態の変化を通して簡潔に示すような展示でした。 しかし、若干道筋を単純化しすぎている、例えば、色彩の問題もまた別にあるのではないか ––例えば、〈点より〉、〈線より〉にしても、青系の色が多いものの、黒や銀、朱のような色が使われることもありますし、 近年の最低限のストロークの作品ではかなり鮮やかな色も使われます。 そんな色彩の視点がもう少し感じられる展示だったら、とも思いました。