府中、初台と京王線沿いにハシゴした展覧会をまとめて鑑賞メモ。
写実的な具象ということで自分の守備範囲ではないかと思いつつ、 フライヤにあった 大野 一雄 を踊る 川口 隆夫 を複数の時間を合成するかのように描いた《Menesis》 (2022) が気になって足を運んでみました。 大野 一雄 関連の作品や、展覧会のタイトルとも関連する作家自身の閃輝暗点も含めて静物を描いたシリーズよりも、 日中戦争終戦直後の満州の難民収容所で亡くなった祖母をテーマにリサーチに基づいて描いた《棄民》シリーズが最も興味深くみられました。 写実的なタッチではあるものの現実から外れる幻想性があるマジックリアリズム的な絵画は、戦禍の様な題材を扱うのに合っています。 現代アートの文脈での写真作品でもコンセプトやサーベイが重要な要素を占めていますが、写実的な具象絵画でもコンセプトやサーベイが重要だと気付かされました。
2000年代半ばから現代アートの文脈で活動する作家の個展で、 企画展示室をフルに使った新作の体験型の作品です。 導入にスマートフォンでインストラクションを聴かされ、 厚手の防水生地からなるテントにもなるポンチョ様のものを着せられ、 壁に殴り書きされたインストラクションに従って鑑賞していく仕掛けになっています。 最後のVR体験は閉館までの時間以上の待ち行列ができており、体験できませんでした。 謎解きさせるようなインスタレーションをインストラクションに従って体験していくわけですが、 興味関心がすれ違ったか、単に花粉症の薬でぼーっとしていたせいか、ひっかかりがありませんでした。
去年の『多層世界の歩き方』 [鑑賞メモ] に続いて、 「多層世界」をキーワードにオンライン会議ツールやオンラインゲームなどに着想した作品を集めた企画展です。 会場全体の雰囲気は相変わらずでしたが、そんな中で印象に残ったのは、 Total Refusal: How to Disappear (2020)。 オンラインFPS (First Person Shooting) ゲーム Battlefield V の素材を使った作品とのことで、 FSPらしい動画に付けたナレーションで、ゲームでは不可能な脱走と戦史で扱われることの少ない脱走を重ねていきます。 『イン・ア・ゲームスケープ』 [鑑賞メモ] にも 多く取り上げられていたタイプの作品ではありますが、 ロシアによるウクライナ侵略で戦場の光景を一年間見続けていたせいか、2019年に観たときより、単なる興味深さ以上のリアリティを感じられました。