柳 宗悦に見出され民芸運動の文脈で知られ、戦間期から戦後1970年代にかけて活動した版画家 棟方 志功 の回顧展です。 仏教 (特に密教) や古事記などの神話・説話に題材を撮り文字も交えた大胆な姿勢と構図を黒線・面を粗く削り出した作風、 という印象が強い作家でしたが、特に初期のものには意外な作風のものもあり、むしろそれらが印象に残りました。
作風を確立した時期の作品『二菩薩釈迦十大弟子』 (1939) などマスターピース感もありましたが、 その題材を仏教からキリスト教に置き換えたような『幾利壽當頌耶蘇十二使徒屏風』 (1953) という作品もあります。 また、東京に出てきたばかりの最初期には、当時の西洋的なモダン文化の影響の強い、繊細な線でカラフルで可愛らしい『星座の花嫁』 (1928-30) にも目が止まりました。
戦後1950年代にもなると作風も確立して、いかにも「世界のムナカタ」な作品となるのですが (自分の持っていた棟方 志功の作風イメージもこれらです)、 そんな中では、渡米時の作品『ホイットマン詩集抜粋の柵』 (1956) は、 確立した作風での図と一体化した日本語の文字の扱いと比べ、慣れない文字・テーマに対しては自由に扱えない様を見るようでした。
『2023-2 所蔵作品展 MOMATコレクション』中、戦間期の版画を展示する第4室もに棟方の作品も1点あり、『棟方志功展』を意識したような内容でした。 棟方の作品には、ここで展示されていた藤牧 義夫 『朝(アドバルーン)』 (1931) や Max Pechstein: »Das Vater Unser« (1921) などのモダンな同時代の版画と題材などの違いはあれど表現的な共通点もあり、 Marc Chagall にも似たモダニズムとの距離の取り方を感じました。
コレクションによる小企画は、戦後、抽象表現主義などの前衛の抽象美術において 過小評価されがちな女性の寄与に焦点を当てた展覧会です。 1947年に設立された女流画家協会に1/3近くのスペースが充てられていましたが、 それに限らず、21世紀に入ってからの作品も取り上げています。 自分の好みという点では、福島 秀子 [関連する鑑賞メモ] や 杉浦 邦恵 [関連する鑑賞メモ] の作品が見られたのが収穫でした。