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Review: 小津 安二郎 (監督) 『東京の女』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2024/01/08

神保町シアターの特集『フィルムでよみがえる——白と黒の小津安二郎』で、小津安二郎のサイレント映画を生伴奏で観てきました。

『東京の女』
1933 / 松竹蒲田 / 47 min. / 無声・白黒
監督: 小津 安二郎.
岡田 嘉子 (姉), 江川 宇礼雄 (弟), 田中 絹代 (娘), 奈良 眞養 (兄).
伴奏付上映, 伴奏: 竹内 理恵.

昼はオフィスのタイピストとして働き、夜は大学教授の下で働いていると偽りカフェー女給として稼ぐ姉と、 姉の稼ぎで進学する弟の、心情のすれ違いを、弟の恋人も絡めて描いた1時間弱の中編です。 2012年に観た時はピアノ伴奏もあってか弟の学費のために自己犠牲で働く女性のせつないメロドラマという印象が残ったのですが [鑑賞メモ]、 タイピストという昼の顔と警察に要注意人物としてマークされるという夜の顔という二面を持つ、 謎めいた女性をめぐるサスペンス的な緊張感ある画面作りもあったのだな、と、気付かされました。

伴奏の竹内理恵は、ソプラノサックスをルーパーでいくつか重ねつつ。断片を散りばめるような抽象寄りの演奏でした。 そんな伴奏も、この映画のサスペンス的な面を際立たせていたでしょうか。 伴奏によって映画の印象も大きく変わるものだと、実感しました。

神保町シアターで正月に特集『巨匠たちのサイレント映画』という生伴奏付きサイレント映画上映が始まったのは、2012年。 2012年は見逃したものの、2013年以降数年は正月に神保町シアターで生伴奏付きサイレント映画を観るのが恒例となっていました。 10年前2014年の正月も特集『生誕110年・没後50年 記念 映画監督 小津 安二郎』で 小津のサイレント映画を生伴奏で観たことを思い出しつつ [鑑賞メモ]、 三省堂のビルも無くなり十年前とは周囲の街もかなり変わってしまったな、などと、少々、感傷的になってしまいました。