2018/2019シーズンのMet Opera live in HD で観て以来 [鑑賞メモ]、上演を生で観たいと思っていたオペラが、 2024年の新国立劇場オペラ研修所 修了公演として取り上げられたので、観てきました。
フランス革命時という時代設定そのままの衣裳はオーソドックスなものでしたが、 舞台美術はミニマリスト的ではないものの、抽象度が高め。 廻舞台を使い、その中央に立った三柱の枠と一本の道を様々に見立てていきます。 現代演出というほどはではない、Met Opera の John Dexter 演出に近いでしょうか。 さらに、枠に掛けられた布を少しずつ落としていくことで、状況の悪化を示すだけでなく舞台の抽象度が上ります。 貴族の邸宅を表す豪華なタペストリー風のプロジェクションマッピングされた布がかけられた枠が、 最後にはギロチン台になってしまいます。 処刑は、パフォーマーの引き攣ったポーズとギロチンの音に合わせて紐から下げられる布を落とすことで表現しました。
公演の性格からしてその質は、世界トップレベルが演じる Met Opera live in HD や Olivier Py 演出の Le Théâtre des Champs-Elyseés のBD/DVD [鑑賞メモ] と比ぶべくもありません。 やはり修了公演だなと思いつつ観始めましたが、結局、作品世界中に思い切り感情移入しながら観てしまいました。 公演を生で観て良いオペラ作品と改めて実感しましたし、それを味わうのに十分なレベルの演出・演技でした。
話は変わって。公演後、隣の建物で開催中の 展覧会を観てきました。
2023年3月の死去後に企画された展覧会で、会場規模からしても、回顧展というほどの内容ではありません。 入口側半分が暗室でのインタラクティヴな映像上映3作品、その奥に明るいギャラリーでの追悼的な展示がされていました。 真鍋 大度 とコラボレーションした映像作品が、Rhizomatics というより、むしろ 池田 亮司 (Dumb Type) に近く感じられたのは、 パフォーマンス的な動きの無いスクリーンへの上映というスタイルのせいでしょうか。 そんなことに興味を引かれた展示でした。