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Review: 坂本 龍一 + 高谷 史郎 『TIME』 [Ryuichi Sakamoto + Shiro Takatani: Time] @ 新国立劇場 中劇場 (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2024/04/14
坂本 龍一 + 高谷 史郎
Ryuichi Sakamoto + Shiro Takatani: TIME
新国立劇場 中劇場
2024/04/06, 14:00-15:15.
音楽 + コンセプト [Sound + Concept]: 坂本 龍一 [Ryuichi Sakamoto]; ヴィジュアル・デザイン + コンセプト [Visual Design + Concept]: 高谷 史郎 [Shiro Takatani]
出演: 田中 泯 [Min Tanaka] (ダンサー), 宮田 まゆみ [Mayumi Miyata] (笙奏者), 石原 淋 [Rin Ishihara] (ダンサー); 藤田流十一世宗家 藤田六郎兵衛 [Rokurobyoue Fujita] (能管, 2018年6月録音)
照明デザイン: 吉本 有輝子; メディア・オーサリング, プログラミング: 古舘 健, 濱 哲史, 白木 良; 衣装デザイン: ソニア・パーク 衣装制作: ARTS&SCIENCE
引用テキスト及びその翻訳: 夏目 漱石『夢十夜〈第一夜〉』, 『邯鄲』 (英訳:Sam Bett), 『邯鄲』 (現代語訳: 原 瑠璃彦), 『胡蝶の夢』 (英訳: 空音 央)
Produced by Richard Castelli, 空 里香, 高谷 桜子; In co-production with Holland Festival - Amsterdam, deSingel - Antwerpen, Manchester International Festival; Developed in collaboration with Dumb Type Office, KAB America Inc., Epidemic.
初演: Holland Festival, Westergas - Gashouder, 20 June 2021.

2023年に亡くなった 坂本 龍一 と Dumb Type の 高谷 史郎 による2021年に初演された舞台作品の日本初公演です。 2018年に観た『ST/LL』 [鑑賞メモ] と同様、 正方形に薄く水を張った床を効果的に使ったミニマリスティックなビジュアルによる、スタイリッシュに静謐な舞台作品でした。 この舞台美術で使われた鏡面のような水面のインスタレーションは、『ST/LL』以前の 坂本 龍一+高谷 史郎 「water state 1」 (2013) [鑑賞メモ] などで見られたものです。

夏目 漱石 の短編『夢十夜〈第一夜〉』 (1908)、能の演目『邯鄲』、中国古典の荘子の説話『胡蝶の夢』から採られたテキストが使われ、 その朗読や字幕に沿うようにパフォーマンスが進展します。 そのテキストの主人公的な役割を 田中 泯 が、そして、テキスト中で主人公に関わる女性の役割を 石原 淋 が無言で演じるのですが、 それはリアリズム的ではなく、ゆっくりした動き、様式的かつ象徴的な佇まいや横になった姿でそれを表現していきます。 笙 を吹きながら静かに舞台を横切るだけの 宮田 まゆみ も淡々と進む時間の歩みを象徴するよう。 時おり投影されるいかにも Dumb Type のタイル貼り画像のラッシュの映像、そして、使われているテキストもあって、現実とも夢ともつかない儚い時の流れを見たようでした。

よく言えばスタイリッシュでわかりやすい作品でしたが、舞台上の各要素の関係が少々説明的にも感じられました。 そんな中では、田中 泯 が枝やブロックを投げ込んで静かな水面を乱すような不穏さが印象に残りました。