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Review: 『ポップ・アップ・アート』 @ 金沢21世紀美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2024/06/30
Pop-up Art
金沢21世紀美術館 交流ゾーン
2024/04/06-2024/07/15 (会期中無休), 10:00-18:00.

2024年元旦の能登地震で金沢21世紀美術館ではガラス板天井が一部落下する被害が発生し、 天井ガラス板約800枚全撤去することとなり、企画展に使用する有料ゾーンが6月22日まで休館となりました。 建物の周縁部の交流ゾーン (無料で出入りできるスペース) は安全が確認され、2月6日から営業再開しており、 そのスペースを利用して開催されたコレクションとパフォーマンスからなる展覧会です。 自分が行った時はパフォーマンスはやっていませんでした。

2010年の Peter Fischli & David Weiss 展 [鑑賞メモ] 以来、度々展示されていたように記憶するのですが、 光庭 (周囲がガラス張りの中庭) に置かれた Peter Fischli & David Weiss: «Concrete Landscape» (2010) に、 サウンドインスタレーション的な要素があったことに気付いたのが収穫でした。 風雨に晒されて荒れ肌となったような畳大のコンクリートのプレートの殺伐としたビジュアルに微かに金属音の響きが添えられていました。 こういった鑑賞体験も観客が少ない時に静かに観れてこそでしょうか。

金沢に最後に行ったのは2018年の Janet Cardiff & George Bures Miller 展 [鑑賞メモ] で、 コロナ禍を挟んで久しぶりでしたが、金沢21世紀美術館はメイン部分は再開直前。 東京国立近代美術館工芸館が金沢に移転する形で2020年10年25日にオープンした 国立工芸館も展示替え休館中、と、 なんとも悪いタイミングでした。 そんなこともあり、今回は、小規模な博物館が集まる尾張町、というか、橋場の交差点界隈へ行きました。

旧金沢県菓子文化会館の1階に2014年にオープンした 金沢美術工芸大学 柳宗理記念デザイン研究所は、 柳宗理デザインの家具食器のショールームのようではありましたが、単に観るだけではなく、椅子に座ったり食器に触ったりできるというのは良いです。 ちなみに、旧金沢県菓子文化会館は老朽化のため取り壊し、研究所は近江町市場近くの金沢市西町教育研修館へ移転する計画もあるようです。

柳宗理記念デザイン研究所の隣には金沢蓄音機館。 蓄音機のコレクションも圧巻なのですが、単に展示しているだけでなく、蓄音機聴き比べ実演があるのが、良いです。 Edison の Phonogragh (蝋管式) だけでなく、縦振動式の円盤式蓄音機 Diamond Disc L-35 がありました。 レコードの歴史に関する本などで、縦振動式は知っていましたが、実際に音を聴くことができるとは。

今回は時間も無く立ち寄りませんでしたが、 柳宗理記念デザイン研究所の裏手には泉鏡花記念館、 通りを挟んで向かいには金沢文芸館があります。 大規模な市立博物館に集約せずに個性的な博物館をあちこちに置いているというのも、金沢の好きな所です。