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Review: Anselm Kiefer: Opus Magnum @ Fergus McCaffrey Tokyo (美術展); Mark Leckey: Fiorucci Made Me Hardcore feat. Big Red SoundSystem @ Espace Louis Vuitton Tokyo (美術展); 『われらバルトに生きて』 Human Baltic @ スパイラルガーデン (写真展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2024/07/03

6月8日土曜は平日の疲れもあって昼過ぎまで休養モードでしたが、夕方に表参道へ出て軽くギャラリー巡りしました。

Anselm Kiefer
Fergus McCaffrey Tokyo
2024/04/02-2024/07/13 (日月祝休), 11:00-19:00.

2025年に京都・二条城での個展か予定されている(西)ドイツで1960年代から現代美術の文脈で活動する作家の個展です。 Wim Winders によるドキュメンタリー映画 Anselm (Hanway Films, Road Movies Prod., 2023) も公開されていますが未見です。 オブジェを荒々しく塗り込んだかのような素材感の強いテクスチャで鈍く暗い色彩の荒廃した情景を半ば抽象的象徴的に描く絵画作品を観ることが多かった作家ですが、 柔らかい光のこじんまりしたギャラリーでの今回の展示は、立体作品というかガラスケース入りのオブジェを並べて、第二次世界大戦の廃墟と死と微かなエロス(性)の荒廃したイメージを描くよう。 インスタレーションになると作風が Christian Boltanski [鑑賞メモ] に寄るようでしたが、記憶を呼び起こすような使用感というよりも破壊の跡のような質感の違いも感じます。

Mark Leckey
Fiorucci Made Me Hardcore feat. Big Red SoundSystem
Espace Louis Vuitton Tokyo
2024/02/22-2024/08/18, 12:00-20:00 (臨時休業、開館時間変更はウェブサイトで告知).

1980年代末のイギリスで活動を始めた YBA (Young British Artsts) の1人、Mark Leckey の個展です。 といっても1990年代に日本であった展覧会 [鑑賞メモ] などには出展しておらず、観るのは初めてのように思います。 «Fiorucci Made Me Hardcore feat. Big Red SoundSystem» (1999/2003/2010) は1990年代末当時の労働者階級のクラブカルチャーを題材としたインスタレーションで、 がらんとしたギャラリーにサウンドシステムの大きなスピーカーが置かれ、その向かいに粗いビデオが投影されていますが、 流れている音は微かでクラブのような部屋を揺るがすような低音が無かったので、空虚にも感じられました。 キッチュなエアバルーンの«Felix the Cat» (2013) もそんな雰囲気を助長していました。

Human Baltic
スパイラルガーデン
2024/05/27-2024/06/09, 11:00-20:00.
Eesti [Estonia]: Arno Saar, Ene Kärema, Kalju Suur, Peeter Tooming, Peeter Langovits, Tiit Veermäe; Latvija [Latvia]: Aivars Liepiņš, Andrejs Grants, Gvido Kajons, Gunārs Binde, Zenta Dzividzinska, Māra Brašmane; Lietuva [Lithuania]: Algimantas Kunčius, Algirdas Šeškus, Aleksandras Macijauskas, Violeta Bubelytė, Romualdas Požerskis.

ソ連時代のバルト三国で第二次世界大戦の余波から生まれたヒューマニスト写真運動 (humanist photography movement) を紹介する写真展で、 1960年代から1980年代にかけての主に人々を捉えた白黒写真が展示されていました。

ソ連における写真表現の文脈には疎くその中での位置は掴みかねましたが、 アメリカの “New Documents” (Diane Arbus, Lee Friedlander, Garry Winogrand) や日本のコンポラ写真との同時代性も感じつつ、 抑圧的な政権下という先入観もあったせいか、抑制された風刺/皮肉の視点もあるようも見えました。

出展されていた写真家の中では、ソ連的な風景を捉えた Gvido Kajons、エストニアのパンクスの肖像の Arno Saar、 子供たちへの優しい眼差しを感じる Ene Kärema、スタイリッシュなヌード写真の Gunārs Binde が印象に残りました。