キャンバスに閉じない壁などへのドローイング、ペインティングなどを タイムラプスでストップモーション・アニメーションとして映像化する作風で知られる 石田 尚志 の展覧会です。 美術館規模での個展としては2015年の横浜美術館以来でしょうか。
『海坂の絵巻』 (2007) の長い紙に連なるインクの流れにはじまり、 部屋の壁だけでなく床にまで広がる塗料のドリッピング、飛沫、渦巻き流れるようなイメージが展開する映像がメインだった2015年の展覧会『渦巻く光』に対し [鑑賞メモ]、 今回の展覧会は、今回は窓から差す光に着想したものをメインに構成。 時間と共に壁や床を揺らぎ移ろう日差しを塗料を使って重層的に固着させるかのように、そして、消えていくような映像を作り出していきます。 差し込む光と塗料で描かれたイメージの関係、窓と対比するかのように額無しのキャンバスや描かれた方形の関係も、 連続的に変容したり飛躍したりとトリッキーな面白さもあります。
2022年で六本木で観た木製ボードを使って空間に作り込みをしていく作品『庭の外』 [鑑賞メモ] も展示されていたのですが、 こちらは、広めな空間に展示されたせいか、少々疎らに感じられてしまいました。
映像作品以前の1980年代から1990年代の絵画作品も展示されていました。 展覧会の企画からその傾向のものが集められていたのかもしれませんが、 矩形の構造と光の動きを感じる作品が目に付き、抽象表現主義的な絵画のアニメーションというか、絵画作品と映像作品との間の連続性が感じられました。