ドイツ Pina Bausch Foundation とイギリス Sadler’s Wells が セネガルの伝統舞踊とコンテンポラリーダンスの学校 École des Sables との共同制作した アフリカ13カ国35名のダンサーによる Pina Bausch: The Rite of Spring [Le Sacre du printemps] 再演です。 2020年にコロナ禍で公演中止になり2021年に初演、やっとの来日公演です。 オリジナルの Tanztheater Wuppertal Pina Bausch の上演は映画 Pina で [鑑賞メモ]、 この再制作版はセネガル・ダカールの砂浜での上演を Sadler's Wells の Digital Stage で [鑑賞メモ]、 それぞれ観る機会がありましたが、上演を生でみるのは初めてです。
ブラックボックスな舞台での上演では砂浜での上演のような色彩の逆転の妙はなく、むしろオリジナルの上演に近い印象です。 良席が取れなかったこともあるかもしれませんが、迫力という点では映画/映像の方が上だったかもしれませんが、ライブならではの生々しさがあります。 若々しく力強く踊るダンサーたちの資質もあるかもしれませんが、 犠牲になる側の壊れやすさというよりも、むしろ、暗示的な男性の女性に対する暴力性や凄惨さの方の印象を受けたパフォーマンスでした。 Pina Bausch の振付・演出は男女に分かれての構成が多いのも、その一因かもしれません。 生で観られたという感慨はありましたが、 そのミニマリスティックな衣裳デザインもあってか、アフリカ内とはいえ13カ国から集められたダンサーの多様性が捉え難かったのは、惜しかったでしょうか。
The Rite of Spring は休憩を挟んだ後半で、前半はソロダンス2作。 まずは、Tanztheater Wuppertal Pina Bausch のゲストダンサーだったこともあるという Eva Pageix による Pina Bausch の最初期のソロ作品 PHILIP 836 887 DSY。 Pierre Henry の往年の電子音楽を使ってのアブストラクトな小品で、こんな作品と作っていた時期があったのかと、感慨深く観ました。 続いては、École des Sables を主宰するアフリカにおけるコンテンポラリーダンスの先駆者的存在である Germaine Acogny のソロ。 踊りといういうより、静かな身振りとナレーションされる言葉を通して厳しい時代を生きた祖先への祈りの儀式を見るかのようでした。