鉄を素材に使ったサイトスペシフィックな立体作品を主な作風とする 青木 野枝 と、
ヴェネチア・ムラーノのガラス工房でグラス・アート (ガラスを素材にしたオブジェ作品) を制作している 三嶋 りつ恵 の、二人展です。
2人の作品が同じ部屋に展示されていたのは入口脇と本館3階のウィンターガーデンのみで、コラボレーション的な展示構成はありませんでした。
東京都庭園美術館でグラス・アートの展覧会は以前にも観たことがあり [鑑賞メモ]、
三嶋のガラス作品については展示空間に映えるだろうとは思ってました。
しかし、青木の作品 [鑑賞メモ] は鉄を切り出したディテールの重めの質感もあり、
アール・デコの洋館という癖の強い展示空間にここまで馴染むとは予想していませんでした。
三嶋 りつ恵 のガラス作品は、ムラーノとはいってもカラフルなものではなく、無色透明なもの。
ガラスケースやライトボック上で50 cm 程度のオブジェを見せるようなオーソドックスな展示も良いのですが、
小ぶりの菊の花の形のガラスを床に並べた«Crisantemo» (2024) や庭木の枝に粒の連なりのようなガラスを懸けた«Rugiada» (2024) など、
小ぶりな作品のシンプルな白い輝きで視線を誘導するかのようなインスタレーションは、
内藤 礼 のようなミニマリズムとは違いますが、窓から差すぼんやりとした日差しや室内照明の微妙な光や輝きも含めて感じさせるような作品でした。
一方の 青木 野江 の作品は、石鹸を使った作品などもありましたが、鉄板から切り出した円や直線から構成したサイトスペシフィックな作品をメインとした構成です。
大きいながら、向こうが透けた、球体や回転放物面のような曲面からなる形状もあって、実際の重量ほどの重さを感じさせません。
その金属の質感がアール・デコの金属装飾に近かったこともあってか、異質なもので空間を強烈に異化するのではなく、隠されていた構造を浮かび上がらせてるよう。
そんな展示空間に寄り添うようなインスタレーションでした。
しかし、狭い展示空間いっぱいに作り込まれたものも多く、どうやって搬入して組み立てたのだろうと思うような作品も少なからずありました。
正門横スペースで、2024/11/29から2025/01/13までの間、
「そこに光が降りてくる カフェ・プロジェクト 光のカフェ」
という、三嶋りつ惠によるグラスやプレートを実際に使ってワイン等の飲み物やチーズ、ケーキを楽しめる
カフェスペースを営業しています。
アールデコ装飾された室内での展示を観たあとのせいかカフェにしては若干殺風景にも感じましたが、
こういう試みも悪くはありません。