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Review: 『DIC川村記念美術館 1990-2025 作品、建築、自然』 @ DIC川村記念美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2025/03/24
『DIC川村記念美術館 1990-2025 作品、建築、自然』
Kawamura Memorial DIC Museum of Art 1990-2025: Art Architecture, Nature
DIC川村記念美術館
2025/02/08-2025/03/31 (月休,2/24,3/31開,2/25休), 10:30-17:00.

資産効率の観点からの「価値共創委員会」の助言を受け、 保有・運営するDIC (旧社名:大日本インキ化学工業) から2024年8月27日に運営見直しの発表のあったDIC川村記念美術館は、 結局、作品保有数1/4で都内移転という「ダウンサイズ&リロケーション」の方針が決まり、 DIC総合研究所や庭園と隣接する佐倉の美術館は3月31日で閉館となりました。 それを受けて開催された、企画展示室を含む全館を使用した現在のコレクションの展示するこの美術館での最後の展覧会です。 というわけで、見納めに足を運びました。

19世紀後半の Impressionism、20世紀初頭の École de Paris や戦間期 Avant-Garde や、1970年代以降の作品も少なから展示されていましたが、 やはり戦後 (1945-1970) のアメリカ美術がコレクションの核の美術館だったのだと実感する展覧会でした。 それも、常設の展示室を持った Mark Rothko [鑑賞メモ] や Barnett Newman (2013年に売却してしまったため、本来 Barnett Newman を常設展示していたギャラリーを今回の展覧会では空にしていた)、 また今回の展覧会でも1ギャラリーを充てていた Frank Stella などの Color Field Painting の系譜です。 シュルレアリズム的な表現では、欧州の作家ではなく、そこから少々外れるアメリカの作家 Joseph Cornell [鑑賞メモ] で1ギャラリーを作れる、 というのも、この美術館らしいでしょうか。

JRや京成の駅からもバスで数十分かかる少々不便な場所で、数年に1度程度の頻度でしか足を運んでいませんでしたが、 池もある広々とした緑豊かな庭園の中にあり、日常から離れての日帰り小旅行で展覧会を味わうのにはむしろ良い環境にある美術館だと思っていました。 完全に終わるのではなく縮小して都心へ移転だとしても、かなり残念です。

閉館間際の休日に行ったこともあり入館に長蛇の列が出来る混雑で、10時45分頃に着いたものの、入館に30分程かかりました。 Mark Rothkoの部屋にも行列が出来ていましたが、こちらは10分程度の待ちで済みました。 ゆっくり作品と向かい合える環境ではなかったのは少々残念でしたが、 今までこの美術館でこんなに混雑した状況を体験したことが無かったですし、こう事も含めてまた一つの美術体験でしょうか。