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Review: 岩竹 理恵 + 片岡 純也 × コレクション『重力と素材のための図鑑』 @ 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2025/04/27
Iwatake Rie + Kataoka Junya, and the Museum Collection: An Illustrated Guide for Gravity and Materials
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
2025/02/01-2025/04/13 (月休;2/24開), 9:30-17:00

2013年にユニットで活動を始めた 岩竹 理恵 + 片岡 純也 による展覧会です。 神奈川県立近代美術館のコレクションから選ばれた近世以前の日本美術とそれらに着想した新作を中心に、過去の作品も交えての展覧会です。 今までも『BankART Life』 [鑑賞メモ] や 『MOTアニュアル』 [鑑賞メモ] などのグループ展で 特に片岡によるその不条理で無用な機械とでもいう作風の作品を楽しんでいましたが、 美術館のコレクションを交えているとはいえ、個展を観るのは初めてです。

好みの作風の作家なのでどれも楽しみましたが、中でも最も気に入ったのは、片岡 純也 の 『Ghost in the Sellotape』 (2015/25)、『サークル管による輪郭の連続性について』 (2025)、『0から1へのアナログ変換』 (2025)を組み合わせてのインスタレーション。 薄暗いギャラリーの一面を使い数寄屋の壁の一面を外から見るかのようなのですが、 クレーター様の影の動きから満月が自転するのを観るかのようなセロテープを透過した円形の光や、 サークル管光源の光が回転する竹箒を抜ける際にピンホール効果で沸き立つような小さな円形の光となっての投影に、 障子窓越しに覗く茶器や掛け軸が組み合わさり、侘び寂びの雰囲気が生かされつつもそれが微妙にズラされるよう。 裏に回ってみると、茶器や掛け軸はインスタレーション中に配置されているというわけではなく、 展示ガラスケース中に通常の展示かのように展示されている、というのも面白く感じました。

このインスタレーションは光使いの妙ですが、 音使いという点ではインスタレーションというより小ぶりな立体作品、 『枝の曲りによる茶器の演奏』 (2025) や『茶筅による巻貝の演奏』 (2023)の細やかな音が印象に残りました。 茶室や茶器からの着想というのは、今まで観た作品では特に印象に無いので、 やはりコレクションから着想するという今回の企画ならではでしょうか。 そして、その着想の妙を楽しむことができました。

キャッチのある動く作品に何かと目が行きがちな展覧会でしたが、 郵便物などからスタンプや模様を切り出す岩竹の採集シリーズの繊細なペーパーワークも、印象に残りました。