Pedro Costa
1989年に長編デビューしたポルトガルの映画監督 Pedro Costa の、21世紀に入って制作するようになったビデオ作品をメインに構成した (スライドショーとプリントの作品、他作家のドキュメンタリー映像上映を含む) 展覧会です。
Costa の映画は観たことが無く作風の予備知識はほぼありませんでしたが、この美術館での展覧会ということで観てみました。
ビデオ作品はマルチチャンネルのプロジェクションで投影されていましたが、
人物を捉えた映像ながら何かを演じている様を捉えているというより、動きの少ない顔のアップやバストアップを多用し、それを短時間のループで反復しいます。
まずは全体把握とざっと展示を一周した後に見直しても投影された映像に何か物語るような展開が感じられず、「液晶絵画」の肖像を観るようでした (プロジェクタでの投影ではありますが)。
暗い背景に人物を浮かび上がらせるようなライティング、テクスチャ感を増すようなオーバーレイの光や火の映像など、さすが映画監督でもあるだけあってスタイリッシュな映像の仕上がりでしたが、
一カ所以外全て立ち見でむしろ観客を回遊させるかのような構成なので、じっくり映像を観る展示ではないようにも感じられました。
アニュアルで開催されている写真を主なメディアに使う新進作家展です [去年の鑑賞メモ]。
展示前半、プライベートな題材の作品が続いて、苦手感は否めませんでした。
後半は対照的で、ラストは、Banaba (キリバスのバナバ)、Nauru (ナウル)、Viti Levu (フィジーのビティ・レブ) といった太平洋の島嶼の近現代史に取材し、
アーカイブ写真や古地図を使ったインスタレーションに仕上げた 呉 夏枝 [Oh Haji] の«Seabird Habitatscape #2 - Banaba, Nauru, Viti Levu» (2024)、
いかにも現代アート主流のリサーチベースのインスタレーションでした。
呉の作品も興味深く観ましたが、最も印象に残ったのは、日本の葬送儀礼をモチーフにして、逆さの文字盤の振子時計に小さく映像を組み込んだ
岡 ともみ のミクストメディア作品 «さかさごと» シリーズ (2023)。
骨董的な質感とささやかな寓話的なナラティブが好みでした。少々ノスタルジックな所など
Janet Cardiff & George Bures Miller の小品 [鑑賞メモ] にも近く感じましたが、
ユーモラスで演劇的というより、日本の葬送の風習を題材とすることでまた違った幻想的で感傷的な雰囲気となっていました。