2000年代以降に活動するアメリカの写真家 Alec Soth の個展です。
グループ展やコレクション展示で観たことががあるかもしれませんが、
2022年の神奈川県立近代美術館 葉山での個展は見逃しており、意識して観るのは初めてです。
生活感のある室内の写真やポートレートなど私的な雰囲気の強い作風でしょうか。
最初期の Sleeping by the Mississippi (2004) など
David Lynch など連想するアメリカン・ゴシック的な雰囲気もありました。
しかし、本展覧会の核 I know how furiously your heart is beating (2017-2019) などに典型的ですが、
ガラスの映り込みや浅めの焦点を使ってレイヤー感を出したポートレイトの、焦点の定まらない雰囲気が印象に残りました。
アニュアルで開催されている写真を主なメディアに使う新進作家展です [去年の鑑賞メモ]。 方向性を強く出さない企画ですが、特殊詐欺を取材してコラージュに仕上げた 千賀 健史、私的な題材を取り上げた 金川 晋吾、ゴミとして捨てられる写真を題材とした 原田 裕規 など、ドキュメンタリ色濃め作品が目立つ構成でした。
その中では かんのさゆり の東日本大震災の津波被害地 (女川でしょうか) 復興の風景を撮った写真は、
題材の点で 畠山 直哉 の陸前高田を撮ったシリーズを思い出されつつも、風景の中に「津波の木」 [鑑賞メモ] のような画面に緊張を持たせる存在に欠け、
住宅の撮り方にしても、正面を避けて建物の輪郭がわからないようなフレーミングにしてタイポロジー的な型を避けるよう。
その撮り方が生むうつろさはむしろ ホンマタカシ の『東京郊外』[鑑賞メモ] に近く感じました。
大田黒 衣美 の作品はドキュメンタリ的ではなくむしろ造形的なもの。
オブジェを組み合わせての写真は20世紀半ばの美術ぽい形式性と思いつつ、
チューイングガムで作ったものを猫の背中に乗せて撮ったものと気付き、その光景を思い浮かべて、微笑ましくなりました。