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Review: Nederlands Dans Theater 2 (NDT 2): Folkå by Marcos Morau / Watch Ur Mouth by Botis Seva / FIT by Alexander Ekman @ KAAT神奈川芸術劇場 ホール (ダンス)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2025/12/15
KAAT神奈川芸術劇場 ホール, 2025-11-21, 14:00-16:15.
Folkå by Marcos Morau; Watch Ur Mouth by Botis Seva; FIT by Alexander Ekman

オランダのコンテンポラリー・ダンス・カンパニー Nederlands Dans Theater (NDT) の去年 [鑑賞メモ] に続いての来日は、 去年の NDT 1 (23歳以上のダンサーからなるメインのカンパニー) と代わって NDT 2 での来日でした。 NDT 2 は Jiří Kylián 芸術監督時代の1978年に若手育成目的のセカンド・カンパニーとして設立されましたが、 独自の演目を持つ NDT 1 とは独立したカンパニーという形で活動しています。 新進の振付家と新作を制作することが多いようで、今回のトリプルビルも Alexander Ekman 以外はこの公演で知りました。

Folkå
by Marcos Morau
Music: Composition / sound design by Juan Cristobal Saavedra, contains compositions: Condividiamo La Luna & Whisper: Kim Sutherland. The London Bulgarian Choir led by Dessislava Stefanova: Mor’f Elenku, trad.; Izgreyala Yasna Zvezda, trad. arrangement by Dessislava Stefanova; Razbolyal Se E Mlad Stoyan by Kiril Todorov.
Staged by Shay Partush; Light Design: Tom Visser; Decor: Marcos Morau; Costumes: Silvia Delagneau; NDT rehearsal director: Ander Zabala
World premiere: November 4, 2021, Amare, The Hague
Duration: 26 min.

スペイン・バレンシア出身で、現在はカタルーニャのバルセロナを拠点に自身のカンパニー La Veronal を率いる Marcos Morau の作品です。 12名のダンサーを使い、Sharon Eyal [鑑賞メモ] なども思い出されるダンサーの密集や線状の連なりを作りますが、Eyal の脈動とは違い全体として有機的な動きを見せます。 人の塊から一人がこぼれ落ちたり、取り込まれたりという形で、要所要所で、集団と個を対比する場面を作ります。 ブルガリアのポリフォニーに太鼓様の打楽器の強い響きによるビートを重ねた音楽を使い、動きもキレ良くメリハリがあるものでした。 男女共に、袖と首周りに細かい抽象的なプリントのある半袖白Tシャツに、黒のスカートにサスペンダー、という衣裳も、音楽同様架空の民族衣装の様に感じられました。

Watch Ur Mouth
by Botis Seva
Music: New composition by Torben Sylvest with use of Bunny Sigler: Shake your booty; Sony music, Warner-Tamerlane Publishing Corp (BMI), Warner Chappell Music Holland B.V. Vocal performances by Magero, The Seva Family
Assistants to the choreographer: Jordan Douglas, Victoria Shulungu; Light Design: Tom Visser; Decor & Costumes: Botis Seva; NDT rehearsal director: Lydia Bustinduy
World premiere: March 27, 2025, Amare, The Hague
Duration: 25 min.

ロンドンの Hip Hop Dance Theatre のカンパニー Far From The Norm を主宰する Botis Seva の作品です。 ヒップホップというよりダブステップ的なビートに乗って、ヒップホップ/ブレイクダンスのイデオムを強く感じる動きを使います。 ラップではなくナレーション的に創作についての考えなどの語りが使われますが、その語りの内容をダンスで表現しているようには感じられませんでした。 むしろ、暗めの照明下で、カーキ色のTシャツやカットソーにルースなパンツという上下に黒のキャップを目深に被った男女8人のダンサーが、 組んだりするような動きをほとんど使わずに踊る様、そして、集団的な動きに1〜2人の動きが並置される様に、都会の中での孤独、分断された社会の中で孤立する人々を連想させられました。

FIT
by Alexander Ekman
Music: No, Nicolas Jaar, Beggars Music Group; Take Five, The Dave Brubeck quartet, © Valentine Music Ltd; Serious drug (instrumental), Wildcookie, written and produced by Freddie Cruger, 2011 Tru Thoughts Ltd, Full Thought Publishing
Staged by Ève-Marie Dalcourt; Light Design: Alexander Ekman, Lisette van der Linden; Set Design: Alexander Ekman; Costumes: Alexander Ekman, Yolanda Klompstra; Text: Alexander Ekman; Collaborating Artist: Julia Eichten; Collaborating Artist / Dramaturgy: Carina Nildalen; NDT rehearsal directors: Lydia Bustinduy & Ander Zabala
World premiere: November 15, 2018, Zuiderstrandtheater The Hague
Durarion: 30 min.

Ballet de l'Opéra national de Paris に振り付けた Play (2017) の日本公演の記憶も新しい [鑑賞メモ] スウェーデンの振付家 Alexander Ekman の作品です。 ちなみに、Ekman は2002年から2005年の間 NDT 2 にダンサーとして在籍していました。 13名のダンサーを使い、集団へ新しい一人が加わる時の互いの違和感、戸惑いなどの微妙な感情や状況のスケッチ的な情景描写を繋いでいきます。 男女共に上半身裸 (女性はベージュのスポーツブラ) にロマンチックチュチュという衣裳をベースに、 時に黒のジャケットを羽織り、最後はチュチュを取ってベージュのアンダーウェアのみの姿で、 Dave Brubeck Quartet の “Take Fave” をメインテーマの様に使った音楽に、 エレガントな動きにユーモアも交えて軽妙洒脱なダンス作品に仕上げていました。 ほぼブラックボックスの舞台に置かれた丸い岩のようなオブジェの醸し出すシュールな不条理さも良いアクセント。 トリプルビルの中で最も楽しめた作品でした。

三作とも衣裳はもちろんダンサーに振り付けられた動きも性差がほとんど無い作品だった、というのも、今の時代のダンス作品ならではでしょうか。 それだけでなく、三作の間でベースにある動きのイデオムや作風は異なるものの、集団と個の関係という通底するテーマが感じられるなど、 共通点というか方向性も意識させられたプログラムでした。