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Florian Claar, The Flying Dutchman Project 2008

Last Update: 2009/11/03

Florian Claar はドイツ (Deutschland/Germany) 出身ながら 1990年代より日本を拠点に活動する美術作家だ。 スタジオ食堂 (立川にあったアーティストランのスペース) のメンバーだったこともある作家だ。

このプロジェクトは、ドイツの詩人 Heinrich Haine の Aus den Memoiren des Herren von Schnabelewopski (1834; 『フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記』) に基づく Richard Wagner による opera Der Fliegende Hollönder (1843; The Flying Dutchman; 『さまよえるオランダ人』) に着想を得た作品という。 といっても、神罰とか乙女の愛による救済とかそういう物語の面は全く感じられず、 幽霊船という部分だけのようにも見えたが。

この作品は幅2m、高さ2m、長さ40〜50m の細長く少々歪んだ楕円球状の形をした 木製のユニット化されたフレームからなる巨大な立体作品だ。 その形は、抽象的な操作で生成された幾何的な形態ながら、 未来の宇宙船か飛行船の「幽霊船」の骨格模型のようでもあり、 線形動物のような生物の体腔や組織を巨大にして模型にしたかのような 有機的な印象を受けるものだ。 木組みの足場の上に載せられ展示されていた。

初めて実際に観たときは、以外と規模が小さく仮設っぽい作りが肩透かしに感じられた。 幽霊船のように、短期間の展示期間であちこちに移動しながら、 少しずつ形態を変えて展示されていくプロジェクトだと聞いて、この仮設っぽさも納得。 (少々、川俣 正 っぽいようにも感じられるが。) 一ヶ所で観て完結するというより、 あちこちに「幽霊船」を出没するのを追いかけていくのを楽しむ作品、 というか、それが面白く感じられそうな作品だ。 今後、あちこちで風景を異化していくのを楽しみにしたい。

(2008/09/13)

横浜美術館前空き地 (横浜市西区みなとみらい3-5)
2008/09/12-15, 終日 (ライトアップ 18:00-22:00).
現地公開制作: 2008/09/01-11.

The Flying Dutchman Project の第一弾は、 『横浜トリエンナーレ 2008』 の応援企画として、そのオープニングに合わせ、 の展示場所は横浜美術館前の空き地に4日間出現した。

横浜美術側から観た、側面からの全体像。 右手が前、左手が後。

前方正面から。船の舳先のようでもあり、 側舷に空いた楕円の窓様のものが目のようにも見えたり。

側舷から見たディテール。木枠はH鋼っぽい作りの所もあり、しっかりしたもの。

登ることは禁止されていたが、枠の間から頭を突っ込むのは可。 中から見ると、中央の大きな体腔とそれを取り囲む6軸の副体腔のような構造が はっきり判って面白い。

日没後、ライトアップで浮かびあがる幽霊船。横浜美術館側から。

ランドマークタワーを背景にして。

ちなみに、次は 2008-11-01 — 11-09 に 田園調布せせらぎ公園に出現する予定とのこと。 『多摩川アートラインプロジェクト アートラインウィーク 2008』 の中での企画だ。

(2008/09/13)

多摩川アートラインプロジェクト アートラインウィーク 2008
東急多摩川線沿線
2008/11/01-11/09, インフォメーションセンター 10:00-17:00.

Florian ClaarFlying Dutchman は、 田園調布せせらぎ公園入口近くの広場の奧、木立の中に半ば身を隠すように置かれていた。 ライトアップの設備も無く、日が暮れたらすぐに暗闇に沈みそうだ。 それも幽霊船らしいのかもしれない。 ところで、作品のタイトルが The Vessel Project II - Fáfnir となっていた。"Flying Dutchman" を使うのはNG、ということになったのだろうか。

The Flying Dutchman / Vessel Project に連なる Florian Claar の作品 Thing 1 + Thing 2 が、東急の蒲田駅のホーム図上にも設置されている。 蒲田駅のホームにまるで列車のように "Flying Dutchman / Vessel" が停車している イメージが大きくプリントされて掲げられている。 この駅にも幽霊船がやってきたかのように。 このように、虚実を含めて、あちこちに幽霊船を登場させていくのだろうか。

[『多摩川アートラインプロジェクト アートラインウィーク 2008』の写真集より]

(2008/11/3)