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Nueva Canción 関連の話題

[1982] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Aug 17 1:24:47 2007

先週末に観たライブの勢いで、 Nueva Canción (⇒ en.wikipedia.org) 小ネタ。

The Wire 最新号 (Issue 282, August 2007) のカバーストーリーは、フランクフルト (Frankfurt am Main, Hessen, DE) のDJ Ricardo Villalobos (関連レビュー) に関する記事 (Philip Sherburne, "Time Out Of Joint: on Ricardo Villalobos")。 彼は1970年チリ (Chile) 生まれでドイツ育ちなのですが、彼の家族というのは 1973年のピノチェト (Augusto Pinochet) 軍事クーデターの際に国外に逃げ出した 左翼・知識人家族の一つだったそうです。 1986年まで一度もチリには戻らなかったそうですが、 1990年初頭からは毎年ヨーロッパの冬には夏のチリを訪れているそうです。 で、こんなエピソードが紹介されています。

ベルリンの Loveparade を運営していた組織が 2006年にサンティアゴで Loveparade を開催したとき、 Villalobos は (Luciano、Richie Hawtin と一緒に) あらゆる階級、あらゆる職業から集まった30万人の群集に向けてプレイした。 セットを終えるにあたっての1曲として、彼はチリのフォーク・シンガー Violeta Parra の歌のスペシャル・エディットを用意していた —&mdash 彼に典型的な波紋が広がるようなリズムに、 彼女の悲しげな歌声とギターを溶け込ませたような。 「信じられなかったよ」と彼は振り返る。 「観客は最初それに気付かなかった。けど、ある時点で気付き始め、 全ての電子音の要素が無くなりオリジナルの歌だけ残ったとき、 突然、観客からウァーッと大歓声があがったんだ。 君には想像できないほどの爆発的な歓声だった。」

しかし、この記事を書いた Sherburne は2005年にチリで開催された Mutek Festival で Villalobos が Violeta Parra をプレイするの聴いているそうで、 記事文中で「それはわかる」とコメントしています。 どうやら、Villalobos は Violeta Parra をよくかけているようです。特にチリでは。 聴いてみたいなぁ、Villalobos による Violeta Parra のミックス。 というか、レコードかCDでリリースしてくれないかなぁ。 こういうのはサンティアゴの群集の中で聴くということに 意味があるような気がしないでもないですが。

この記事では、他にも Villalobos が 熱心な ECM レーベルであることに 触れてたりして、なかなか興味深いです。 というか、Violeta Parra とか ECM とか house/techno とは違う文脈の エピソードが多いあたり、いかにも、The Wire らしい切口の記事です。

話を Nueva Canción に戻しますが、 もちろん、自分は Violeta Parra とかを同時代的に聴いていたわけではありません。 知ったきっかけは、Parra の "Arauco" のカバーが収録された Robert Wyatt, Nothing Can Stop Us (Rough Trade, ROUGH35, 1982, LP) (関連発言)。 けど、影響として大きかったのは、むしろ、Robert Wyatt, Work In Progress (Rough Trade, RTT149, 1984, 12″) での Victor Jara, "Te Recuerdo Amanda" と Pablo Milanes, "Yolanda" のカバー。 このシングルは高校時代ヘビーローテーションだったので、 スペイン語もほとんどわからないのに "Te Recuerdo Amanda" も "Yolanda" も (あと、英語の歌詞ですが、同じくこのシングルに収録されていた Peter Gabriel, "Biko" も) 今でも歌詞をだいたい口づさめる (正しい発音ではないけど) くらい覚えてしまってます。 もちろん、頭に残り易いメロディを持つとてもいい歌、ということも大きいです。 ちなみに、この12″ シングルは、 Depeche Mode をはじめ多くの初期 Mute 音源の録音 (関連発言) でお馴染、 Blackwing studio で John Fryer のエンジニアで録音制作されています。 伴奏は Wyatt 自身の弾くチープな synth と控えめな percussion だけなのですが、 そういう音作りも初期の Mute の音や Young Marble Giants 〜 The Gist あたりの音に近く感じられ、 とても気に入っていたのでした。 あと、このレコードをよく聴いていたときに ジョーン・ハラ 『ビクトル・ハラ —— 終わりなき歌』 (Joan Jara, Victor: An Unfinished Song, 1983; 新日本出版社, 1985) という本が出て、歌の背景を知るこができたのも大きかったかも。

先週末のライブをきっかけに、Work In Progress を 発掘して聴き直したりしてるのですが、 やっぱり "Te Recuerdo Amanda" はいい歌だなー。く〜。 というわけで、Victor Jara 自身の歌う "Te Recuerdo Amanda" どうぞ ⇒ YouTube

[2009] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Fri Sep 28 1:22:07 2007

1ヶ月余前のNueva Canción の フォローアップ的小ネタ。

今年に入って円安もあって海外に直接注文する気持ちが萎え気味です。 特にユーロ高で、フランス、イタリア、ギリシャあたりに直接注文したくても、 値段を考えると……。 そんなわけで、最近は国内かアメリカ (US) の店ばかり利用してるのですが、 久しぶりにアルゼンチンのブエノスアイレス (BS AS (Buenos Aires), Argentina) の店を使ってみました。アルゼンチン盤も最近は アオラとかのカタログも充実していて、 直接オーダーする必要を感じてなかったのですが、 メジャー盤だと逆にインディ系の店で扱いが無かったりするのが悩ましいです。

買ったのは、Nueva Canción のアンソロジー3タイトル、 Violeta Parra, Antologia (Warner Music Argentina / Warner Music Chile, 857381614-2, 1999, CD)、 Victor Jara, Antologia Musical (Warner Music Argentina / Warner Music Chile, 857389067-2, 2001, 2CD)、 Quilapayun, Antologia 1968-1992 (Warner Music Argentina / Warner Music Chile, 398425693-2, 1998, 2CD)。 やはりある程度音源をCDで手元に持っておいた方がいいかなぁ、と、 チリ (Chile) で2000年前後に相継いでリリースされたアンソロジーを入手してみました。 アンソロジーとしてはこれらが最もマトモそうでしたし、 自分が知っているような有名な歌はとりあえず全部収録されていましたし。 チリ盤で入手できればとも思ったのですが、良さげな購入ルートが見付からなかったので、 比較的無難に購入できるアルゼンチン盤にしておきました。 一タイトルあたり送料込みでUSD15.00 (2000円弱) 程度と安かったです。 Violeta Parra のアンソロジーは初回限定で2枚組でリリースされていたのですが、 さすがに1枚のみの "version simple" しか出回ってませんでした。残念。 Violeta Parra と Quilapayun のは歌詞がブックレットに載ってるのですが、 Victor Jara のが載っていないのも、ちょっと残念。

しかし、やっぱり Violeta Parra はいいなー。く〜。 届いたのは一ヶ月近く前なんですが、それ以来、ヘビーローテーション入りしてます。

[2010] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Sat Sep 29 1:38:56 2007

金曜28日の晩、仕事帰りに、渋谷宮益坂のいきつけのレコード店 El Sur Records へ。 この26日に開店十周年を迎えたということで、お祝いにミニボトルの赤ワインを差入れ。 居合わせた客 (というかレコード会社の営業の方) と一緒に、店内で軽く呑み。

で、入荷したばかりのCDやDVDをいろいろ見せてもらったのですが、その中に、 Victor Jara: El Derecho Vivir En Paz (Carmen Luz Parot (dir.), 1999; Warner Music Vision / Warner Music Chile, 0927-40797-2, 2003, DVD(NTSC/all)) なんていうものが。 1999年に制作された Victor Jara の伝記的なドキュメンタリ映画のDVDです。 副題はもちろん「平和に生きる権利」。 1998年9月16日の殺害25周年のイベントの様子に始まり、 それから Victor Jara の生涯を幼少期から当時の関係者の証言や ゆかりの場所の現在の映像などで描いていく内容です。 1970年前後当時の映像はそれほど多くなく、スチルが使われることが多いですが、 それでも、断片的ですが Violeta Parra の弾き語りの様子の映像とかも使われています。 演劇の演出家としての Jara についても多くを割いています。 ちなみに、言葉はスペイン語ですが、英語字幕を表示することが出来ます。

あと、合間に Victor Jara 自身の guitar 弾き語り映像や当時の Chile の様子の映像を 使ったビデオクリップ的な白黒映像が挟まれます。 曲は "Luchin"、"Te Recuerdo Amanda"、"El Cigarito"、"Vamos Por Ancho Camino"、"Plegaria A Un Labrador"、"El Derecho De Vivir En Paz" の5曲です。

YouTube で見られる Victor Jara の映像のソースはこれだったのかー、というか。

しかし、まるで昨晩 Nueva Canción を談話室に書いたことを読まれていたかのような、絶妙なタイミングです。 こんな映画というかDVDが出ているというのはノーチェックでした。 ジャケット・デザインも昨晩紹介したアンソロジーCD Antologia Musical (Warner Music Argentina / Warner Music Chile, 857389067-2, 2001, 2CD) とお揃いだし。迷わず買ってしまいましたよ。く〜。 この映画、ヨーロッパやラテンアメリカの映画祭でよくかかってるようですが、 日本ではあまりちゃんと紹介されていないみたいだし、 内輪での上映会ネタとしていいかもしれないと思ったり。 観たいという人はあまりいないような気がしないでもないですが……。