Ricardo Villalobos (aka Villalobos) は、 チリ (Chile) 生まれだがドイツ (Deutschland (Germany)) 育ち、 Playhouse や Perlon、 Cocoon Recordings といったフランクフルト (Frankfurt am Main, Hessen, DE) のレーベル (ただし、Perlon は現在はベルリン (Berlin, DE) へ移転) を拠点に活動する house/techno DJ だ。
去年末リリースした Fizheuer Zieheuer は 2曲入りCDシングルだが (12″シングルもリリースされている)、 どちらも35分強のトラックで実質フルアルバムと言ってもいいだろう。 Playhouse レーベルの色である ソフトなテクスチャ感のある音をミニマルに反復させる micro house な音 (関連レビュー) に近い音として楽しめるが、 そこからのズレ具合も面白い作品だ。
タイトル曲の "Fizheuer Zieheuer" では、バルカン (Balkan) 風の brass band の演奏をサンプリングしている。 それも、例えば Electric Gypsyland (レビュー) での remix のように、techno/house/breakbeats のビートの上に brass の演奏を乗せたものではない。 tuba が奏でる軟らかい和音と hand drum (おそらく darbuka) の硬質な音による短いフレーズを反復させて、 それでビートを作り出しているのだ。 特に brass のミニマルな反復の合間に、時折、リードの trumpet のアルベジオ的なソロと それに合わせての tuba の和音が、反復感を損ねない程度にさりげなく差し込まれる。 brass の柔らかい音のテクスチャが micro house 的な感覚を生み出している。
もちろん、ビートは brass や darbuka のサンプリングだけで組み立てられているわけではない。 他の音も硬質な響きを多用し、micro house というより、 Maurizio (Moritz von Ozwald) が Basic Channel 〜 M-Series でリリースしていた minimal techno (関連レビュー 1, 2) や Richie Hawtin, DE9: Closer To The Edit (NovaMute, NOMU90CD, 2001, CD) (レビュー) に近い。そして、そういった音と brass の軟らかい音が絡み合いながら ビートを織りなしていくところが、"Fizheuer Zieheuer" の魅力だ。 "Fizbeat" は brass や darbuka の音を抜いて M-Series のようなトラックになっているが、 それも十分にかっこいい。 曲の始まりや終わりを忘れさせるような35分強という長さも、このような minimal な音作りに合っている。
brass band をネタに使っているというのも面白いが、 それ抜きでも minimal さを充分に楽しめる一枚だ。