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Love Is The Song We Sing: San Francisco Nuggets 1965-1970 について

[2241] 嶋田 丈裕 <tfj(at)kt.rim.or.jp>
- 若林, 東京, Tue Aug 26 23:51:40 2008

今週末のCDレビューはお休み。代わりにリイシュー物について徒然と。

いまさらながら、 Love Is The Song We Sing: San Francisco Nuggets 1965-1970 (Rhino, R2 165564, 2007, book + 4CD) を入手。 1960年代後半の San Francisco, CA, USA の "Summer Of Love" な音楽シーンの盛衰を捕えた box set です。 というよりも、その音楽シーンの歴史を、 写真や図版とテキストで描いた120ページの本 (関連音源CD4枚は付録) という仕上がりは素晴しい〜。

Nuggets: Original Artyfacts From The First Pychedelic Era 1965-1968 (Rhino, R2 75466, 1998, 4CD box set) は、けっこう好きだったのですが、 続いてリリースされた Nuggets II: Original Artyfacts From The British Empire & Beyond (Rhino, R2 76787, 2001, 4CD box set) や Children Of Nuggets: Original Artyfacts From The Second Psychedelic Era 1976-1995 (Rhino, R2 74639, 2005, 4CD box set) は、 米国 (US) 外、影響を受けた後の世代、となって、焦点がボケてしまいました。 最初の Nuggets に負う部分が多い企画で、その柳の下を狙っているような、 という印象も否めず、食指が伸びませんでした。 Love Is The Song We SingSan Francisco Nuggets と "Nuggets" シリーズであることを謳っていますし、 "The First Psychedelic Era" の音楽という意味では偽りは無いものの、 "Nuggets" と銘打つ必要も無い内容。 やっぱり、時代性地域性とそのスタイル、と焦点が良く絞れている企画は良いですね。

Blue Cheer, "Summertime Blues" が入っている〜、とか、 Janis Jopin は "Piece Of My Heart" じゃないんだ……orz、とか、あるわけですが、 Love Is The Song We Sing 収録曲で最も惹かれたのは、 やっぱり Jefferson Airplane, "White Rabbit"。 "Somebody To Love" (収録されているのは The Great! Society によるもの) にしても、この頃の Grace Slick の歌声はいいなあ、と。

といっても、1967生の自分が Grace Slick を初めて聴いたのは 中学に進学した1980年代に入ってから。 Jefferson Starship やソロとして活動していた頃で、 『ベストヒットUSA』のような番組でミュージック・ビデオを見たり、 普通にアメリカ・ヒットチャート物が好きだった友人に薦められたり。 しかし、当時 New Wave や UK indies に傾倒していた自分にとって、 正直言って、その頃の Grace Slick は趣味が違う、というか、 その見た目もかなりダサく感じるものでした。

そんなイメージが強かった Grace Slick を見直すきっかけとなったのは、 The Durutti Column with Debi Diamond, The City Of Our Lady (Factory, FAC184, 1987, 12″)。 このシングルに収録された "White Rabbit" のカバーを気に入って、 オリジナルも聴いてみたのでした。 今聴いても、electro なビートに繊細な guitar と緩い trumpet のソロが絡む The Durutti Column のアレンジはとても好きですが、 歌声は Grace Slick の方が遥かにかっこいいです。く〜(悶)。 音楽だけでなく、 1967年代末の Grace Slick の写真を見て、これほどにも変わるものかと。 というか、1970年代に rock が経た変化の大きさをそこに見たように思いましたよ。

ところで、The Durutti Column のカバーで歌っている Debi Diamond ってどういう人なんでしょう。 "White Rabbit" をボーナス曲に含む再発CD Domo Arigato (Factory Once / London, 556 038-2, 1998, CD) のライナーノーツにも、録音の1年前に New Order のギクで会った Los Angeles (CA, USA) の女性、という程度のことしか書かれていません。 写真を見る限り、ポルノ女優 (⇒ en.wikipedia.org) とは別人のようですし……。

ところで、Love Is The Song We Sing をきっかけに Nuggets の方も聴き返していたりしたのですが、 box set 付属の本に Jac Holzman, "Nuggets As A Notion" というテキスト (Jac Holzman & Gavan Daws, Follow The Music: The Life And High Times Of Elektra Records In The Great Years Of American Pop Culture, FirstMedia Books, 1998 からの抜粋) が載っているのにいまさらながら気付いて、 一番最初の Nuggets は1972年に まだ Jac Holzman がいた Elektra レーベルからリリースされたんだったんだなあ、と。 オリジナルの Nuggets には Elektra 音源は収録されていませんけど。

Holzman 時代というか1960年代半ばから1970年前後の Elektra レーベルは、 ある意味で、イギリス (UK) の underground なレーベル (関連発言) の アメリカ (US) における対応物 (というか逆だな) とも言えるわけですが、 その時代の Elektra のアンソロジーもリリースされています: Forever Changing: The Golden Age Of Elektra Records 1963-1973 (Rhino, R2 74745, 2006, book + 4CD + CD-ROM)。 Rhino らしい豪華なパッケージで、 Nuggets 的なアンソロジーとも言えるのかもしれません。 Elektra が表で Nuggets が裏、という感じですが。 しかし、さすがにこのアンソロジーを買うほどの思入れは Elektra にないしなあ……。 イギリス (UK) の underground なレーベルのアンソロジーのように、 コンパクトで廉価にまとめたものも作ってくれればいいのに……。