カッコ [ ] 内の日付は私が読んだ日付です.(発行日にあらず!)
白星(☆)の数は独断と偏見によるお勧め度(目安:☆☆☆以上はお勧め). 逆に黒星(★)はお勧めしないことを意味.(某雑誌の映画評に準拠しております.)言いたい放題に個人的感想を書いております. 気分を害された方(例えば著者の方:-))がいらっしゃればお詫びいたします.(_o_)
(※) 私のアトピー体験談:
あるとき皮膚が痒くなり,しばらく市販の薬を塗り続けていたが効果がないので,まず近所のSという皮膚科に行った.S皮膚科では,一切の検査は行なわれず,ちらっと見て“湿疹を掻き壊したのでしょう”といってステロイドの塗り薬をくれた.それを塗ると劇的に症状は回復し,私は直ったと思った.しかし,しばらくすると症状は復活し,またステロイドを塗り,すぐに回復し,またしばらくして症状が復活し,またステロイドを塗り...といったことが続いた.この間に何度かS皮膚科を訪れたが,途中でステロイドの塗り薬が変わったものの状況はあまり変わらない.私が“これはアレルギー性のものではないか?”と聞いてみても,そこの医師は(やはり一切の検査はしないまま)アレルギーには見えない,と言う.そして,塗る→直る→再発する→塗る...これではラチが開かない.そうこうしているうちに,患部の皮膚がぺらぺらの紙のような感じになってきた.いろいろ調べてみると,どうもステロイドの副作用らしい.こりゃいかん,ということでS皮膚科には見切りをつけることにした.(結局,S皮膚科からは「アトピー」という言葉を一度も聞かなかったし,私も自分がアトピーだとはこの時点では知らなかった.)
よし,医者を変えよう,と思って,近所に最近開業した菊池皮膚科を訪れた.そうしたら,“アトピーの可能性が高い,念のため検査をしてみましょう”と言われ,すぐに血液検査をしてもらい,見事(!?)アトピーであることが分かったのである.アレルゲンはダニやカビなどであった.その後は的確な治療法により着実に快方へ向かい,今は抗アレルギー剤を適宜飲むくらいで症状はほぼ完璧に抑えられる状態になっている.
良い医者にかかる,ということがいかに大切なことかが身に染みたと共に,自分の病気については自分でもよく勉強することが重要であると改めて思った次第である.
→ 「アトピーはもう難病じゃない」の詳細情報 [2005/9/26追加]
ちなみに,三宅島噴火で注目されるようになった火山性のSO2については,桜島について少しだけ触れられている.
本書では日本におけるもっとも大きなSOxの発生源は桜島からの火山ガス(年間60万トン→日量1,600トン)とされているが,現在ではもちろん三宅島が最大の発生源である.
2000年秋から2001年春にかけては日量40,000トン程度,2001年夏の少ない時でも日量10,000トン以上のSO2が放出されている.日本全体の人為発生源の全体量が年間約100万トン(→日量3,000トン弱)であることを考えれば,いかに膨大な量が三宅島から出ているかが分かるであろう.
もともと本書を手に取った理由は,三宅島島内の植物被害(火山ガス±降灰・泥流による)についてちゃんと理解したかったからなのだが,SO2ガスの曝露と植物被害の関係についてはあまり調べられていないらしく(本書での記述が少なく),結局よくわからなかったのは残念.
関連:
・大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」:http://w-soramame.nies.go.jp/index.html
・独立行政法人・国立環境研究所・若松伸司氏のプロジェクトのページ:http://www.nies.go.jp/pmdep/index.html
新垣紀子・野島久雄著(講談社ブルーバックス)[2001/8/30]
「方向オンチ」とは何か,その本質に迫った研究の紹介.
オビには“「地図が読めない女」の誤解を解く”とあって某ベストセラーを意識した出版になっているが,本書では某ベストセラーのようにステレオタイプの押し付けはせず,より科学的な考察が主体となっている.
頭の中の地図(認知地図)の話(ちなみに私はかなりはっきり「サーベイマップ型」),
街の中を歩く実験の紹介(迷わずに目的地まで行けるか?),
「空間認識能力」(例えばどちらが北かを感知できる能力)の高低ではなくむしろ「外界の情報をインタラクティブに利用する能力」が決め手であること,等々,非常に興味深い話が分かりやすく述べられている.また,本書の最後の方には,目的地まで迷わずに到達するための「技術」的なアドバイスが解説されていて,これまで自分は方向オンチだと思っていた人も目からうろこが落ちるのではないだろうか?
私は昔から地図を見るのが大好きで,ドライヴの際にも助手席でナビをすることが多かった.また,仕事上,2.5万分の1地形図を見ながら山の中(それも道の無いところ)を歩いたりすることも多い.そのため,地図さえあれば道に迷うことはあまりない.しかし,逆に言えば地図が無いときは非常に不安に思うこともある.なお,私は3次元図形を頭の中で回転すること(知能テストでお馴染み)も割と得意なので,例えば地形図を見ておよその地形を頭の中で3次元的に構築した後にそのイメージを回転させて(頭の中で)いろいろな方向から俯瞰することもできるが,この能力は山歩きや地質調査の時以外はほとんど使っていない.私の場合,街中を歩く時はやはり専ら"情報利用能力"に頼っているといえよう.
(※)このあたり,「ゾウの時間ネズミの時間」(本川達雄)での議論(サイズの生物学)を想起させられる.現代の人間はヒトとしての生物学的な限界を超えて無理な生活をしているのである. ついでながら,先ごろ組織改編(統合)した産総研について,改編前の各研究所のサイズは150人に近いものであり互いのコミュニケーションは良好であったが,現在は3000人規模の組織になってしまい,そのせいか様々な問題が噴出している.これなども,“150名の群れ”という適正規模を無視した組織設計がもたらした問題だとは言えないだろうか?
なお,上記の私の文を読んでチンプンカンプンだと思った方は,お願いですからインターネットの常時接続などしないで下さい.他の皆さんの迷惑です.(^^;
→ 関連情報: インターネットでは“これ”に気を付けましょう
本書の後半は「紙がみの消息」というエッセイ集になっている.こちらは紙を題材にした連作エッセイである.“紙”というテーマでよくまあこれだけのことが次々と書けるものだと感心する.“紙”は安っぽくて大量消費のイメージがあるが,貴重な森林資源を食いつぶしている元凶でもある.つまり,紙の消費は環境問題である.
たとえば,公衆トイレに備え付けている「ペーパータオル」,手についた水分を拭き取っただけでポイポイ捨てられる.もったいない.布のタオルならば再利用できるのに.そして,赤瀬川氏はそこから
「ここで一気に要約すると,地球資源のムダ使いはイキなかっこいいことで,資源再利用は貧乏性でダサい」(p.266)
と痛烈な皮肉を飛ばす.また,これに関連してタバコのポイ捨てにも触れて,
「イキなのは環境破壊で,環境保全はダサい」(同)
と同様に皮肉っている.
このあたり,赤瀬川氏の“世の中を切る刀”(p.312,対談)をちらりと見せられた気がした.
島村英紀著(岩波ジュニア新書)[2001/6/14]
地球科学関係の良書がまた1冊出た.
“地震と火山の島国”というタイトルを見て一瞬日本のことかと思いきや,アイスランド(アイルランドと混同しないように注意!)の話なのであった.しかし,このタイトルの付け方には意味があって,実はアイスランドと日本との比較論(共通点もあれば対照的な点もあり)があちこちに出て来る.
アイスランドは,引き裂かれるプレートの境界の真上に位置する火山島であり,また北極圏ギリギリに位置し,ヨーロッパ最大の氷河を擁する,という特異かつ厳しい環境にある国であるが,この国の人たちは実に豊かに暮らしている.彼らの生活を見ると,「豊かさ」とは何なのだろう,ということを考えさせられることであろう.
様々な魅力的なエピソードが紹介されているが,印象的なのは氷河の下で起こった噴火の話である(1996年にグルムスベートンとバルダルブンガの両火山の間で起こった噴火;理科年表1998年版にも記載あり).厚さ数百mの氷河の下で静かに始まった噴火であるが,やがて氷を溶かして氷河に穴を開け,地表に噴煙が顔を出す(その様子は本書の表紙写真にもなっている).この噴火事件を劇的なものにしたのは,噴火の爆発そのものではなく,噴火活動によって氷河が溶かされて出来た大量の水によって大洪水(※)が起こったということであった.
(※)ちなみに,このような洪水を現地の言葉で「ヨークルフロイプ」と呼んでいる.
また,アイスランドでは「地熱発電」が盛んである.
地熱発電は地球のエネルギーを有効に活用するものであり,二酸化炭素(温室効果の原因)や核廃棄物を出さないクリーンで環境にも優しいエネルギーである.
日本でももっと積極的に地熱発電を進めてはどうか,と思うが,
様々な要因(技術的というよりは政治的・経済的なもの)によって伸び悩みを余儀無くされている.何とかして日本でももっと地熱発電を推進できないものであろうか?(最後はちょっと地熱発電の宣伝モード.(^^;)
→ 旧地質調査所地殻熱部のページ(かつて私がメンテをしていました.日本の地熱発電所の一覧などが見られます.)
田宮俊作著(ネスコ/文藝春秋)[2001/6/4]
模型好きなら知らぬ者とてない「田宮模型」がいかにして世界でもトップレベルの模型メーカーになっていったかを,社長自らが回想した半生記.モデルを可能な限り実物に近付けるためには苦労をいとわずにこだわる様子がおかしくも感動的である.
取材に次ぐ取材を行ない,そのためには世界を駆け巡りもすれば,本物のポルシェをばらばらに分解さえする,という徹底ぶり.(^^;
本書の発売当時(1997年)はミニ四駆ブームだったようだが,
私にとってTAMIYAといえば何と言ってもプラモデルである.
1/700ウォーターライン・シリーズ(戦艦大和ほか(※))や1/35ミリタリーモデル(ドイツ戦車など)は合わせて軽く100箱は作ったと思う(私が小学生だった1970年代のこと).この本でも,ミリタリーモデルについてはかなりページが割かれている.
社長自らが模型ファンであるからこそ,ここまでこだわって素晴らしい品質の製品を開発することができたのであろうし,優秀なスタッフにも恵まれたのだろう.金もうけのためではなく,夢(男のロマン!? :-))を売るために奮闘したメーカーの痛快なる成功物語と言えよう.
なお,最近になって本書の文庫版も出た.
(※) ウォーターライン・シリーズは,タミヤ,アオシマ,フジミ,ハセガワの4社が作っていたが,当時小学生だった私の目から見ても明らかにタミヤのモデルがダントツに優れていた.何しろ造型の精密さが素晴らしかったのだ.
なお,念のため断っておくが私は決して戦争賛美論者ではない.子供の頃にプラモデルの解説書(これがまた良くできていた)を読む事によって戦争に関する知識は蓄積されたが,それによってむしろ戦争の悲惨さや空しさを理解する事となったのである.
関連書籍:
佐藤和正著(光人社NF文庫)[2001/8/31]
太平洋戦争の頃に連合艦隊で活躍した巡洋艦たちの紹介.著者による贔屓を割り引いたとしても(^^;,日本の巡洋艦はなかなかの高性能だった.ただし防御は弱かったようだが.
巡洋艦には装備の軽重によって軽巡と重巡とがあるが,それぞれで指向が異なっていて,特に重巡は条約で上限を押さえられていた戦艦に代わるものとして考えられていたことが理解できた.
はっきり言ってマニア向けの書であるし,所詮は軍艦であり"戦争の道具"なのであるから,そちらの方面にアレルギーのある人は読まない方が良いだろう.また,後ろの方に行くほど誤字脱字が目立つようになり,慌てて脱稿した様子が窺い知れる.:-)
それはさておき,なるべく多くの兵装を積み,適度な防御力を持ち,かつ高速で,条約(ただし途中で破棄したが...)の制限にも抵触しない,という実に制約の多い中で,苦労して設計された様子が良く分かって興味深い.高い制約の下で高性能を実現した日本の巡洋艦は,ある種の"機能美"(私はSLにも同じものを感じる)を持っていて,それがプラモデル作りの魅力になっていた.
[本書で取り上げられている巡洋艦一覧]
古鷹・加古・青葉・衣笠/妙高・那智・足柄・羽黒/高雄・鳥海・愛宕・摩耶/最上・鈴谷・三隈・熊野/利根・筑摩/天龍型(天龍,龍田)・球磨型(球磨,多摩,北上,大井,木曽)・長良型(長良,五十鈴,名取,由良,鬼怒,阿武隈)・川内型(川内,神通,那珂)/夕張/阿賀野・矢矧・酒匂・能代/大淀/鹿取・鹿島・香椎
(太字は私がウォーターライン・シリーズで作成したことのある艦.当時,巡洋艦は一箱400-500円程度で買えたと記憶している.戦艦・空母は700-800円,駆逐艦は200円程度だったか.ちなみに,本書では説明されていないが,軽巡と重巡の艦名には原則的にそれぞれ川と山の名前が付けられていた.ただし途中の改装で軽巡から重巡に格上げされたりして原則が破れている艦も多くてややこしいのだが....)
佐藤和正著(光人社NF文庫)[2001/9/12]
太平洋戦争の頃に連合艦隊で活躍した空母たち,および空母の成り立ちの歴史の紹介.空母は軍艦としては新興で,第一次世界大戦後に生まれ,第二次世界大戦において発展し,今や海軍の中心的存在となった,という経緯がある.初期の空母の開発ではさまざまな試行錯誤があったことが紹介され,興味深い.例えば,英海軍の「フューリアス」(第2次改装時)のように前後に飛行甲板が分かれたデザイン(失敗だった)や,日本の「赤城」「加賀」のような三段空母(飛行甲板が三段ある→これも失敗だったため一段に改装)は特殊な例としても,艦橋をどこに作るか(甲板の上か下か,上の場合は右か左か),煙突をどこに作るか(艦橋の場合と類似,ただし煙突の場合は傾斜の角度や煙の誘導の仕方まで考慮)など設計上のさまざまな苦労話の紹介は,物を作る上でいかに多種多様なことを考慮しなければならないかということを考えさせられる.
[本書で取り上げられている日本の空母一覧]
鳳翔/赤城・加賀/龍驤/蒼龍・飛龍/翔鶴・瑞鶴/大鳳/雲龍・天城・葛城/信濃/龍鳳・翔鳳・瑞鳳/千歳・千代田/隼鷹・飛鷹/大鷹・雲鷹・沖鷹・神鷹・海鷹
(太字は私がウォーターライン・シリーズで作成したことのある艦.当時,空母は700-800円だったと記憶している.)
佐藤和正著(光人社NF文庫)[2001/9/23]
戦艦は長い間海戦の主役であり,その保有量が国力の反映であるとさえ見なされた.20世紀の前半は,少しでも大きい船体に少しでも大きい主砲を積む,いわゆる「大鑑巨砲主義」がエスカレートした時代であり,戦艦大和はその究極と言えるが,その登場時にはすでに航空機決戦の時代に移っていた.そんな,時代の徒花たちとその背景を解説した書.各国の建艦競争,戦艦がその持つ能力をほとんど発揮せずに終わった太平洋戦争海戦史,苦心の改造話,などが紹介される.多くの戦艦が登場するが,その末路はすべて哀れで空しい.
[本書で取り上げられている主な日本の戦艦]
大和・武蔵/金剛・榛名・比叡・霧島/扶桑・山城/伊勢・日向/長門・陸奥
(太字は私がウォーターライン・シリーズで作成したことのある艦.当時,戦艦は700-800円だったと記憶している.ちなみに,本書では説明されていないが,戦艦・巡洋戦艦の艦名には原則的にそれぞれ国と山の名前が付けられていた.)
木俣滋郎著(光人社NF文庫)[2002/1/21]
小型・高速で何かと便利に使われた駆逐艦.その発達と戦術の変化などが伺い知れる1冊.ただ,本書はマニアックすぎた.話もあちこち飛んで構成としても読みづらい.個人的には「**入門」の中では最も読破がしんどかった.
[本書で取り上げられている主な日本の駆逐艦]
種類も隻数も極めて多いため,以下では「私がウォーターライン・シリーズで作成したことのある艦」を列挙するにとどめる.
睦月(睦月型)/初雪?(特型)/初春(初春型)/朝潮(朝潮型)/雪風(陽炎型)/秋月(秋月型)/島風(島風型)
渡辺一徳著(熊本県一の宮町発行)[2001/5/29]
阿蘇火山(カルデラおよび阿蘇五岳等)の形成史を詳しく解説したもの.
阿蘇といえば何と言ってもカルデラであるが,このカルデラを形成したときの巨大噴火に思いを巡らせれば自然の圧倒的な力に呆然とするばかりであろう.体積80立方キロ以上,最大到達距離140kmという大火砕流が,中・北部九州全域を数m〜数十mもの厚さで覆い尽くした光景を想像できるだろうか?
この本は,カルデラの話題だけでなく,
灰噴火や低温火砕流など,2000年三宅島噴火現象においてもキーとなるトピックを含んでいる.
例えば低温火砕流(上記の巨大噴火にくらべれば実に小規模なものであるが)について紹介すると,p.180の写真(阿蘇1979/9/6噴火;死者3人・負傷者11人)の様子は三宅島2000/8/29の火砕流とそっくりであるし,火砕流に遭遇した人たちの証言や堆積物の地質調査の結果なども同様である.一歩間違えば三宅島2000/8/29噴火でも同じような被害が出ていたかもしれないと思うと実に恐ろしい.
本書は地元の自治体が発行しており,それ以外の地の一般の書店では入手が難しいかもしれないが,下記に問い合わせれば取り寄せることができるだろう:
問い合せ先:一の宮町(tel. 0967-22-3111),定価952円(税抜)
チャットや掲示板などでは,インターネットの匿名性を利用して,互いの素性を知らないままに広範囲のコミュニケーションが簡単に成立する.これは,インターネット(少し前ならパソ通)が普及する以前にはちょっと考えられなかったことだ.この新しいコミュニケーションの形を,主たる設定に取り込んで物語を作る例は,特にコミックでは数年前からいくつもあった.私が持っているだけでも,以下のものがある:
「オレ通 A to Z」(恋緒みなと)
「OLC」(小川京美)
「センチメントの季節/第8巻」(榎本ナリコ)
この中では,最新の榎本ナリコのものが,最も深い洞察に達していると思えた(特に,巻末の解説文).[本段落のみ,2002/05/15加筆]
参考図書:本書の巻末のリストにも載っているが以下の図書は大いに参考になるし私からもお勧めしておきたい.
・数学でみた生命と進化(カール・シグムンド)
・精神と物質(立花隆・利根川進)