edogawa's diary on 2002-2003 season #08.
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10月13日(日)11:15 a.m.

 ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ちっ、ちぃ〜〜〜〜っ、と例によって夥しい舌打ちが聞こえる今日この頃だが、木曜の晩には愚妻、金曜の朝からは私と、夫婦揃って38〜39度の同時多発熱でわが家は大変な騒ぎになっておったのである。少しは同情しろ。そんなわけで、木曜の晩に見たベティスの2試合(ダービーとマドリー戦の後半)や昨日の運動会のことなど、書くことはたくさんあるのだが、仕事がヤバイことになっているので、本日はこれまで。おまけに次の更新がいつになるかは不明。明日かもしれんし、来週かもしれん。あしからず。



10月10日(木)11:00 a.m.

 二度あることは三度あるというし、どうやら「寝耳に水」のケースもあるらしいことがわかったので、いつノーベル文学賞の連絡が来てもいいようにスーツを着てこようかと思ったのだが、私の本はまだ外国語に翻訳されていないことに気づいて、やめておいた。軽率な日本の私。

 ゆうべは、未見だった愚妻につきあって日中戦をビデオで再見したので、今日は書くことがないなぁと思っていたら、久しぶりに「愛読者カード」をいただいた。Oさん、ありがとうございました。どうやら私と同業のようで、そのせいかダメ編集者への愚痴を綴った「ピン子ちゃんネタ」がツボだったご様子。不愉快なことがあっても、ここに書き殴って面白がってもらえると「ひどい目に遭ってヨカッタ」と思えるから不思議だ。「仕事でヒーヒー言ってるときが一番面白い」と言ってくれる人もいる。他人の不幸は蜜の味である。一昨日のオフ会でも、ピカちゃんに「泥棒が入ったとか書いてあると、よっしゃー、と気分が盛り上がります」というようなことを言われた。私自身、110番にダイヤルしながら「こりゃ日誌が長くなるぜベイビー」と内心でほくそ笑んでいたのが正直なところだ。Oさんは、「スールシャール&ソルスキア」をキーワードに検索してここに引っかかったらしい。いろんな入り口があるものである。ちなみに、いまでも相変わらず各方面で悪評を耳にするピン子ちゃんは、その後、けっこう二番煎じ系ベストセラー本を出している模様。仕事のプロセスと結果は、必ずしも評価が一致しない。原稿のクオリティと本の売れ行きも、必ずしも一致しない。と、信じたい。

 以上で書くことがなくなったのだが、久しぶりに仕事が立て込んでいるので、まだ書いていたい。仕事があるなら早くそっちを書けっちゅう話だが、例によって忙しければ忙しいほど逃避モードが解除されないのである。このあいだ、週刊文春で斎藤孝先生が「会話への割り込みは車線変更と同じで加速しないとダメ」というようなことを書いていたが、仕事にも似たようなところがあると思う。いまの私も、首都高で合流できずにオロオロと立ち往生しているような感じ。しばらくヒマでぶらぶらしていたので、びゅんびゅん走っている編集者たちから急に仕事を投げられると、スピード感が合わないのだった。スペースに出された高速パスに追いつけない左サイドバック、みたいなもんかね。そうか。セガレの動き出しが遅いのも、やはり私のせいか。グズグズ遺伝子なのか。たぶん、あらぬ方向にボールを蹴ってしまうのも、私の方向音痴遺伝子のせいだ。きっとそうに違いない。それ以外にも、足遅遺伝子、不決定力遺伝子、勝負弱(よわ)遺伝子、天性のツキのなさ遺伝子など、サッカーに不向きな遺伝子が私にはたくさんありそうだ。嗚呼。土曜日の運動会が私は怖い。世の父親たちの多くが息子の運動会でムキになって応援するのは、子の失態を通じて自分の欠陥が露呈するのを恐れているからなのだ、きっと。今日も、家に帰ったら、かけっこのロケットスタートを練習させよう。



10月9日(水)13:50 p.m.

 ゆうべは、本誌創刊以来初のオフ会みたいなものを挙行。まぁ、ふだん仲間を自宅に集めるのもオフ会みたいなものではあるのだが、今回は初対面の方々との集いである。けっこうドキドキした。恵比寿の英国式サッカーパブ「フットニック」に集ったのは、以前本誌でも紹介した好著『ワールドカップで国歌斉唱!』(ベーマガ)の著者いとうやまねサン、その御友人のピカちゃんサン(女性)、私の4人。おまえは数も数えられんのかと言われそうだが、そういうことではない。いとうやまねサンはご夫婦だから2人なのである。いわゆる一つの藤子不二雄システムだ。ちなみにピカちゃんは、あんがいシーマン好きだ。シーマン好きな女性には初めて会った。あらゆる意味で記念すべき夜だ。

 みなさん、深川登場をきっかけに本誌の存在をお知りになった方々である。更新が滞っているときは、パソコンの前で「ちっ、まだ更新してないのかよ」と舌打ちなさっているそうで、やはりあれは幻聴ではなかったのだと再認識。きっと、私の舌打ちもソウマエ先生に聞こえていることだろう。ネットは舌打ちに満ちている。ところで、当たり前のように「江戸川さん」と呼ばれるのはまったくもって当たり前のことなのだが、メールではそれが日常化しているものの、面と向かって「江戸川さん」と呼ばれるのは初めてなので、とても妙な気分だった。乱歩も、一度はこんな気分を味わったのだろうか。乱歩は「乱歩さん」で「江戸川さん」ではないかもしれんが。

 何だかんだとサッカーの話に花を咲かせつつ、7時からは日本×中国(アジア大会男子サッカーQF)を店内観戦。こういう店で試合を見るのは初めての経験である。大勢で一緒にサッカーを見ると、人間はチャンス/ピンチに対するセンサーの感度が異様に上がることがわかった。要するに、「行け〜〜〜〜!」「危な〜〜〜〜い!」のタイミングがやたらと早いのである。自宅のテレビ観戦なら「それは入らんだろ、ふつう」と落ち着いて見るようなシーンでも、店内は阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだった。楽しいなぁ。話をしながらなのでよく見ていなかったが、私が画面に目をやるたびに、日本は自陣に釘付けにされていた。ぜんぜんボールが奪えない。だが、ようやくつかんだ最大にしてほぼ唯一の好機を中山がモノにする。店内は最高潮。全員が両腕を突き上げていた。人はどうしてゴールが決まると腕を突き上げるのだろうか。まあ、ほかに突き上げるものも無いわけだけど。1-0で準決勝進出。山本監督、早くもトルシエを超えたってことですね。えらいえらい。だけど32年ぶりってどういうことだよ、おい。

 引き続き、11時過ぎまでW杯の思い出話など。お三方は、国立競技場のパブリックビューイングにも行かれたとのこと。ロシアに勝った後はたいへんな盛り上がりで、帰途についた群衆のあいだからは、電車が通れば「電車コール」、警官がいれば「おまわりコール」、白木屋があれば「白木屋コール」など、目に入るすべてのものがコールされていたらしい。白木屋チャチャチャって、そんなもん応援してどうする。興奮した人間って、本当に何をしでかすかわからない。しかし人間には、そういう「祭り」が時に必要であるに違いないということが、店内観戦の熱狂に触れただけでもよくわかった。個の自立だ何だかんだと言っても、私たちには時として、何かに「束ねて」もらいたいという欲求があるのだ。たぶん。

 最高に愉快な夜だったが、たった一つ不愉快だったのは、日本戦の後に放映されたプレミアの試合で、ユナイテッドの先制ゴールを店内の大多数が喜んでいたこと。おまえらそんなにベッカムが好きか。ユナイテッドが勝てば最高なのか。そういう人生でいいのか。いいんですけどね、べつに。ラツィオの試合ばかり流している店はないんだろうか。あるわけねぇよな。そもそも映像素材が手に入りにくいご時世だもんな。ちぇっ。ともあれお三方、楽しい一時を過ごさせていただき、ありがとうございました。ボーっとしてて、つまんだ食べ物のお金を払い忘れましたが、別の機会に埋め合わせさせてくださいませ。そのうえ、セガレにアントラーズのユニまで頂戴しちゃって、すみません。背番号が13だったので、ウナギ嫌いのおびちゃんの前では着せられませんが。あはは。いとうやまね御夫妻からは、企画売り込みの極意を伝授していただいた。やはり、何かやりたいことがあったら積極営業は欠かせない。無意識のうちに、「原稿は注文を受けてから書くもの」と思い込んでいたらしい自分を反省した。がんがん前がかりで攻めなきゃいけません。



10月8日(火)15:30 p.m.

 報道内容と異なる結果になったことを詫びる、だとぉ? おまえらが操作できない「結果」を詫びてどうする。真実と異なる報道をしたことだろ、詫びるべきは。要するに、あの時点では真実だったのに、「決意は固い」はずだった中田が翻意した、って言いたいわけだな朝日新聞め。本人コメントも取らずに憶測で書きましたゴメンナサイ、と素直に謝らんかコラ。恥を知れ恥を。んで、あれを署名で書いた記者には何か処分が下されたのか? 部長が謝ればそれで済むのか? どうなんだよ、おい。

 突如としてヒマ生活にピリオド。マッキー編集長から、またまた飲食店情報ノックの厳命が下ったのである。〆切は21日、分量は「200字×100〜120本(もうちょっと増えるかも)」とのこと。何本でもかかってきやがれってんだ。やる気満々だ。大人がくつろげる素材の味を生かした隠れ家が何軒あるか楽しみだ。えーい、働くぞコンチクショー。

 それに加えて、某大物漫画家×某大物ポップスターの対談原稿もあるのだった。ゆうべは、その取材で東京タワーへ。対談そのものは全日空Hで行われたのだが、その前に東京タワーで撮影をしたのである。日曜日だったら、ピンク色だったんだけどね。きのうはフツーの電飾でした。あらためて近くから眺めると、東京タワーってわりと妙な形をしている。誰がデザインしたんだろう。夜7時の東京タワー展望台には、どちらかというと田舎臭い感じのカップルの姿がちらほら。東京タワーって、実は東京でいちばん田舎臭さを感じられる場所なのかも。売店に並んでる土産物なんか、まったく都会を感じさせない侘びしげなモノばかりだ。でも、ヘンにスタイリッシュな雰囲気にするよりは、よほど好感が持てる。タワーのプラモデル(電飾付き)をセガレのお土産に買おうかと思ったが、仕事中なのでやめておいた。担当編集者ゴンザレスには、「見物人が近寄ってきたらガードマンになってね」とノーギャラで余計な仕事を頼まれていたのだが、みんな遠巻きにポップスターを眺めるだけで、無遠慮な輩はいない。ま、みんなスターじゃなくて夜景を見に来てるわけだしね。展望台からの夜景は、なかなかのものでした。



10月7日(月)14:15 p.m.

 朝っぱらから、アタランタ×ラツィオ(セリエ第5節)をビデオ観戦。0-1で何気なく勝ち点3ゲット。勝因はパンカロの離脱。なぜならゴールを決めたのが代役セーザルだったからである。ジュゼッペ君は、そのまま給料ドロボーやっててくれてよろしい。でも大変つまらない試合でした。キエーザ、はよ出て来んかのう。退屈な90分の中でいちばん驚いたのは、後半ロスタイムに投入された下インザーギの声だった。あんなに野太い声だったなんて。録音テープの速度を半分にしたみたいな感じだった。もしかしたら、カフーと声を取り替えっこしたのかも。そういえば兄ちゃんの声も聞いたことないような気がする。弟と同じ声なんだろうか。ちなみに私は、電話で親が間違えるくらい兄と声が似ていますが。顔も、友人に笑われるぐらい似ている。なのに、学校の成績も現在の収入も圧倒的に兄のほうが上。遺伝子は、あんがい不公平に出来ている。シモーネ君も、兄ちゃんとの決定力の差に不公平感を抱いているのだろうか。決定力遺伝子って、存在しそう。

 きのうは、難儀だと思っていた仕事を意外にあっさり片付けた後、晩飯を食いながらレッジーナ×ブレシア(セリエ第5節)を横目で観戦。2-2のドロー。ちゅんちゅけ君の同点FKに感激。ブレシアのGK、左に寄りすぎじゃ。ナメとんのか。チームの勝ち点はなかなか増えないが、3戦連続のゴールはえらい。セリエ随一の同点ゴーラーかも。

 その後、フェイエノールト×アヤックス(オランダ第7節)を9時半頃から追っかけビデオ観戦。例によって攻めあぐニスタぶりを存分に発揮するフェイエを相手にすると、アヤックスのスピード感が際立つ。2年ぐらい前はダルダルなサッカーをしていた印象のあるアヤックスだが、変われば変わるもんだよな。ワンベルトのファインゴールでアヤックス先制。途切れていた映像が回復して十数秒後の出来事だった。グッドタイミング。映像回復直後に放たれたリトマネンのシュートをいきなりテンション上げて実況なさった倉敷さんに「プロ」を感じました。さらにリトマネンのゴールもあって前半は0-2。そのリトマネンと息の合ったところを見せるズラタンは、思っていた以上に上手いプレイヤーだが、やっぱり見ていて落ち着かない。ソワソワする。どういうわけか、見てはいけないものを見ているような気分になるのが不思議だ。攻めあぐねながらも1点は返したフェイエだったが、ファンホイが決めるところを決められず1-2。虚しい空想だが、小野がこのアヤックスに入ったら最高のファンタジーを見せてくれるような気がした。

 さらにミラン×トリノ(セリエ第5節)を後半からライブ観戦しようと思ったのだが、すでに3-0と前半で決着がついていたので、アーセナル×サンダーランド(プレミア約9節)のほうにチャンネルを合わせたら、こっちも前半を3-0で終えていた。強いチームの試合は、ちゃんと最初から見ないとダメだ。「迷ったときはセリエよりプレミア」がサッカー観戦の鉄則なので、そのままハイベリーの試合を見たのだが、後半のアーセナルは無得点。サンダーランドが1点だけ返して3-1だった。フロがクインと交替するシーンは、ちょっと異様。そういえば、さっきの試合でサンダーランドが一時ズラタンを欲しがっていたと聞いた。ピーター・リードって、のっぽフェチなのか? でも、フロ、クイン、ズラタンの3トップって、ちょっと見てみたい。ちょっとでいいけど。



10月6日(日)12:20 p.m.

 珍しく日曜日に更新しているのは、珍しく日曜日に仕事場へ来たからである。「月曜午前中〆切」の仕事を土曜日に発注されたら、日曜日にやる以外にないじゃないか。ど平日に連チャンで映画なんか見てた報いでしょうか。ありがたい話だ。頼まれたのは、紀行文のようなもの。ある日本在住のギリシャ人が能登半島を旅したのだが、原稿を書く予定だった本人がギリシャに帰国したまま音信不通になっちまったので、私に書けというのである。書けるかそんなもん。与えられた材料は、立ち寄り先でのエピソードを記した簡単なメモだけ。「輪島の海岸端の電話ボックスで大きなクモ発見」って、なんでそんなことメモしてるんだろう、このギリシャ人は。大きなクモを発見したギリシャ人が何を感じたり考えたりするのか、私には想像もつかない。試しにゲオルガトスの顔を思い浮かべて想像したが、やっぱりわからない。まあ、それでも書くんですけどね。マッキー編集長には、「江戸川の実力が発揮できる仕事だろ」と言われたが、こんな仕事で実力を試されるのはかなわんです。ギリシャ人め。

 ゆうべは、日本×ウズベキスタン(アジア大会男子サッカーGL)を観戦。中国戦に向けて体力温存、どうせなら省エネのゼロゼロで切り抜けてみたらいいんじゃないかと思っていたが、中山のPK一発で1-0だった。いい意味で、渋い。このGL、アジアではありがちな試練をいくつも経験できて、首脳陣にとっては「しめしめ」とほくそ笑みたくなるような3試合だったんじゃないだろうか。このチームがアテネに行けるかどうかで、日本サッカーの底力が問われるような気がする。ところで、「谷間の世代」って言うけど、彼らの下の世代はタレント豊富なの?「断崖の世代」でないことを祈りたい。



10月5日(土)

 ゆうべは、マンチェスター・シティ×リバプール(プレミア第8節)をビデオ観戦。オーウェンがシュマイケル相手にハットトリックで0-3。ようやくシュートのコツを思い出した感じか。一方、古巣相手のアネルカもときどき「上手い!」と唸らせる技術を披露していたものの、ときどきしか上手くない。どうも集中力が持続していないような印象である。ところでシティには、ソン・チーハイという名前の中国人がいた。見ていると何故かむずむずと麻雀がしたくなる字面だ。背番号も筋目の17だし。1が通るからって、7が通るとは限らないのが麻雀の厄介なところだ。何を言ってるんだ。あー。ポンとかチーとか引っかけリーチとかして、挙げ句の果てに「にんろくいちさん」とか言いたいぞ、おい。セッティングしてくれ。誰か。



10月4日(金)15:00 p.m.

 きのうの『サイン』があんまりだったもんで、捲土重来を期して今日も朝から吉祥寺で映画。私が捲土重来を期したところでどうにもならないけどね。アル・パチーノ主演『インソムニア』である。きのうは20人ぐらい見ていたが、今日はわれわれ夫婦を含めて9人しか観客がいなかった。9人で映画を見るのは、けっこう寂しい。Jリーグ以前、30人ぐらいでJSLを見てた人たちも、きっと寂しかったんだろうなと思った。30人ってこたぁないか。そんなことはともかく、殺人事件の捜査中に同僚を撃ち殺してしまった刑事(アル・パチーノ)が、その罪を犯人(ロビン・ウィリアムス)におっかぶせようとして苦労&苦悩する、というお話だ。インソムニアとは、不眠症のことであるらしい。白夜の土地では暮らしたくないなぁと思いました。まとめ方が大ざっぱすぎるぞ。これは面白かったです。きのうから評価のハードルが極端に下がってるから、本当はごくフツーの映画かもしれないけど。少なくとも、腹は立たなかった。ただ、『サイン』もそうだったのだが、テレビCMやポスターの宣伝と内容のあいだにギャップがありすぎ。少女の死体が髪洗われてたり爪を切られてたりしてたことなんて、ぜんぜん些末な話じゃーん。針小棒大というより、客に想定させる「ジャンル」からして違う感じである。映画の宣伝って、昔からこんなにウソつきだったっけ? コレやってると、そのうち愛想を尽かされるよん。

 フェイエノールト×ディナモ・キエフ(CL1次第3節)をビデオ観戦。ニューカッスル戦では妙にキビキビしていたフェイエだが、またいつもの彼らに戻っていた。「いつもの彼ら」とはどういうものかというと、「攻めあぐねる彼ら」だ。敵陣に入ると、どの選手の背中にも「現在、攻めあぐね中」と書いてあるように見える。攻めあぐねさせたら、フェイエの右に出るチームはないかも。よっ、世界一の攻めあぐニスタ。どうでもいいのだが、「攻めあぐねる」とは言うのに、なぜ「守りあぐねる」とは言わないのだろう。「守りかねる」とは言うか。「そこまで監督がフラット3にこだわるのであれば、我々としては守りかねますっ」とか。直立不動で。言わないですね、きっと。フラット3って、早くも死語化してるような気がする。ともあれ、攻めあぐねた結果、試合はスコアレスドロー。本当のことを言うと、退屈のあまりサイモン・クーパー『サッカーの敵』を読みながら横目で見ていただけなので、フェイエがどう攻めあぐねていたのかは、よくわからない。その本によれば、「ディナモ」と名の付く旧共産圏のクラブは、どれも秘密警察やら内務省やらのバックアップを受けていたらしい。そら強いわなぁ。負かしたら何されるかわからん。そういう話を聞きかじると、とたんに胡散臭く見えちゃいますね。旧ソ連リーグのディナモ・キエフ×ディナモ・モスクワ戦なんて、どんな暗闘が繰り広げられていたんだろうか。秘密警察ダービー。ヤなダービーだなぁ。ボールやコーナーフラッグに盗聴器とか仕込んでありそう。意味ないか。ところで、「ディナモ・ピョンヤン」ってクラブはないの? 平壌発電機。会社みたい。



10月3日(木)16:25 p.m.

 こんな生活をしていていいのだろうかと自問しつつ、セガレを送園後に愚妻と吉祥寺へ出かけ、メル・ギブソン主演『サイン』を観賞。当たり前だが、平日の午前10時30分に映画館に来る人々は、皆とてもヒマそうな顔をしている。

 しかし、いくらヒマな人々を相手にしているからって、こんな映画で1800円も取っていいという道理はないと思う。ラストシーンの後、延々と流れるスタッフロールを眺めながら、私はとても虚しい気分になった。嗚呼、こんなに大勢のプロフェッショナルたちが寄ってたかって、こんなに中途半端な映画を作り上げてしまうとは。人間って、ときどきものすごく哀しい。

 どうしてこのシナリオを大金かけて映画化しようと思ってしまったんだろう。この映画の、何を面白がれと言うのだろう。ストーリーの半ばで「これ、どう落とし前つけんの?」と観客に心配かけてどうする。「まさか宇宙人出てこねえだろうな」と思ってたら本当に出てきたので、けっこう驚いた。最近の映画は、宇宙人を安易に登場させすぎだと思うのは私だけだろうか。たいへん鼻白みました。罵倒する言葉がなかなか見つからないが、あえて言うなら、コモ×レッジーナ戦以下。この映画の製作者たちは、「人を心底からシラけさせるにはどうすればいいか」という大テーマに真正面から取り組んだとしか思えない。

 どういう話かというと、こういう話だ。メル・ギブソンのトウモロコシ畑にミステリーサークルが出現する。同じものが世界中で次々と発見される。その上空に夥しい数のUFOが現れる。テレビはそのニュースで持ちきりだ。ブラジルでは宇宙人の姿が目撃された。メル・ギブソンも、知り合いの家の貯蔵庫に閉じこめられた宇宙人を目撃した。そういう状況に直面したとき、あなたならどうするだろうか。私なら、警察か軍隊かウルトラ警備隊に連絡をする。だがメル・ギブソンはどこにも連絡をしない。家に帰って、窓やドアに板切れを打ち付けて宇宙人が入って来られないように自衛するのである。台風じゃないっつうの。近くに宇宙人いるっつうの。地球が危ないんだっつうの。おまえの家だけ守ってどうすんだっつうの。

 さらにネタバレを承知で書くが、この宇宙人は水が苦手なんである。水が体にかかると死ぬんである。そんなにまで水を苦手にしている宇宙人が、わざわざ地球を侵略しようと思うものだろうか。私は、しないと思う。地表の3分の2がサリンの海で覆われている星に移住したいと思う地球人がいないのと同じことである。しかもその宇宙人は、地球人を食おうとしてるんだそうだ。あのう、人体って70%が水なんですけど。食ったら死ぬぞおまえら。

 などと細かい揚げ足取りをしていても虚しいばかりなのでもうやめるが、一つだけ救いだったのは、メル・ギブソンの弟役が顔もキャラもビエリに似ていたこと。彼をビエリだと思って見れば、クライマックスの場面はけっこう可笑しい。可笑しがってどうする。いや、ひょっとして、これは超難解なコメディだったのだろうか。

 某社編集部より、先日ゴーストした本の刊行日が決まったとの連絡。著者校が遅れまくって大変だったらしい。「パソコンに深刻なトラブルが発生してしまって云々……」というのが、その著者の言い訳だったとか。「深刻なトラブル」という重々しいが抽象的な物言いに、「それ以上は詮索しないでお願いだから」という魂の叫びを感じる。こういうのって、いくら見え透いていても、査察団なんか送り込めない以上、そのまま受け入れるしかないのが厄介ですね。そういえば昔、別の編集者から、「猫がパソコンのキーボードを踏んづけてしまい、書いた原稿が消えてしまった」という言い訳をしたライターがいる、という話を聞いたことがあったっけ。どんなパソコンだそれは。とはいえ私も他人のことをとやかく言える立場ではなく、いま思えば顔から火が出そうな言い訳を数限りなくしてきたわけだが、窮地に追い込まれた人間というのは、どんなに見え透いたウソでも「これなら通用するはずだ。なぜならウソだと断定する証拠は何ひとつ無いからだ」と固く思い込んでいるものである。ウソだと断定する証拠なんかなくとも、相手に「ウソっぽ〜い」と思われた時点で人間としての信用を失っていることは忘れている。気をつけよう。少なくとも、「原稿が洪水で流失しました」とは言わないほうがよい。

 ゆうべは、バイエルン×ミラン(CL1次第3節)をビデオ観戦。上インザーギの2発で1-2。ピッポ君、いよいよ歯止めが効かなくなって参りました。すべてのパスはピッポに通ず。有力パサー満載&シェフチェンコ不在の現状は、彼にとって夢にまで見たユートピアなんじゃなかろうか。それにしても、ミランはセードルフが効いている。そりゃ、リバウドやらルイコスタやらが目の前でウロウロしとったら、守っとるほうはセードルフまで手が回らんやろなぁ。こんな強豪と引き分けたラツィオって、本当にすばらしいと思いました。で、バイエルンは1次で消えちゃうわけ?



10月2日(水)11:40 a.m.

 きのうは、日本×バーレーン(アジア大会男子サッカーGL)を観戦。「油断大敵」の模範演技みたいな90分だった。もっとも、前半を4-0で折り返したら油断しないほうがどうかしている。正直に告白するが、私も油断していた。バーレーンはとても弱いのだと侮っていた。ハーフタイム後に「後半も4点取りますか」とコメントした水沼さんも、たぶん油断していたんだと思う。ちなみにスタジオの金田さんは、日焼けしていた。現場の人じゃないのに、どうしていつも日焼けしているんだろう。っていうか、後半のバーレーンは本当に前半と同じチームだったのだろうか。顔も名前も似たような奴ばっかりだから、全員フル代表に入れ替わってたって、誰も判別できんしな。たぶん、サウジ代表と入れ替わっていても判らない。関係ない話だが、西アジアのチームって、どうしてユニの胸に思いっ切り国名を書いてるんですか。とにかく5-2である。最後にダメ押しゴールを決めてスカッとさせてくれたのはえらい。どうせ経験を積むなら、1点差まで追い詰められてみるのも一興だったように思いますが。コモ×レッジーナ戦よりは百倍おもしろいゲームだった。

 とっくに賞味期限切れの試合だが、ニューカッスル×フェイエノールト(CL1次第2節)をビデオで見た。小野の堂々たる立ち居振る舞いにはシビれちゃうね。キックオフ前にセンターサークルで仁王立ちしてる姿なんか、風格たっぷりだ。あのヘアスタイルでサイズ大きめのパンツ履いてると、ちょっと鳶のお兄さん風だけれども。でも、その不良っぽさから滲み出る男気がイカしてるぅ。試合は、前半早々のゴールを守りきって、0-1でフェイエノールト。フェイエノールトって、あんなにキビキビ動くチームだったかなぁ。ある意味でプレミアを象徴するようなニューカッスルのがむしゃらサッカーが、彼らから別の一面を引き出したような感じだった。これもCLの面白味の一つか。



●(ものすごく久しぶりの)似てる人シリーズ

#186 U-21の田中達也と寺尾。(妻)
#187 U-21の田中隼麿と兵藤ゆき。(妻)
#188 サンダーランドのピーター・リード監督と大相撲ダイジェストの山崎アナ。(妻)



10月1日(火)

 なぜ都民の日に私立幼稚園が休みになるのか、よくわからない。おまけに台風でセガレの紅白戦も中止。なので、ど平日なのに、朝から晩まで家族3人でダラダラ過ごす。間が持たないので、浜田山のTSUTAYAへ。拙著は、辛うじて一冊だけ棚差しで在庫。一時はビジネス書の棚からW杯コーナーへ出世したのだが、またビジネス書の棚に舞い戻っていた。ウォルフレン教授の隣にささっていて、照れ臭いやら申し訳ないやら。『モンスターズ・インク』のビデオを借りて帰宅し、セガレと一緒に観賞。妻子は映画館で見たのだが、私は初めて見た。おもしろかった。ただ、化け物のバリエーションおよび造形に関しては、日本(というか水木しげる)のほうがレベルが高いような気がする。

 きのうは、インテル×キエーボ(セリエ第4節)をビデオ観戦。立ち上がりの速攻でキエーボが先制したが、ビエリの2ゴールで2-1。右足で蹴るのを嫌って体勢を入れ替え、左足で器用に流し込んだビエリの1点目は、バックハンドを嫌って強引に回り込むシュテフィ・グラフのフォアハンドみたいだった。中盤が薄味で、「ボール取ったらビエリとレコバにお任せ」感の強いインテルは、ちょっと退屈。一方のキエーボは「セリエらしからぬ美しいサッカー」ともっぱらの評判だが、セリエでやってるからこそ際立つという部分が多いような気もしますな。キエーボが美しいなら、ドイツのサッカーも美しいと褒めないと不公平だと思った。オフサイドトラップは別にして、あのスピード感と直線的な爽快感は、ジャーマン風味が入っているような気がするのだがどうだろうか。

 引き続き、アラベス×ラ・コルーニャ(リーガ第4節)を後半から観戦。アベラルド、イリエ、デュトゥルエルなどの加入で、アラベスは「吹き溜まり感」が強い。みんな良い選手だし、効果的な補強だとは思うのだが、なんとなく物悲しさがチーム内に漂ったりしないのだろうか。試合は、何者かの超高層ヘッドでアラベスが先制するも、トリスタンのゴールで同点、さらにセットプレイからのドサクサゴールでデポルが逆転。ホームでは弱いが、アウエーでは妙に強い。でも、真っ赤なアウエー・ユニはとても弱そうに見えていただけないです。



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