Волга (Volga; ⇒ MySpace) は、ロシアのモスクワ (Москва (Moscow), RU) を拠点に活動する、 electronica な音作りで中世から伝わるロシアもしくはスラブの (Slavic) folk を歌うグループだ。 ソ連時代から underground な rock / noise グループ Ночной Проспект (Notchnoi Prospekt; ⇒ MySpace) で活動していた Алексей Борисов (Alexei Borisov; ⇒ MySpace) によって、 1997年に女性歌手 Анжела Манукян (Anjela Manukian) とのプロジェクトとして始まった。 2002年頃から Manukian, Borisov, Lebedev, Balashov の4人組で活動している。 Помол (Pomol) は、ベスト盤、ライブ盤、リミックス集を除くと3年ぶりの4作目にあたる。
Manukian の高く震えるような folk 的な詠唱はあいかわらずだが、 deep house 色濃かった2作目 Выпей До Дна (Bottoms Up!) (Exotica, EXO 03 130, 2003, CD) (レビュー) の後、dance floor 指向は薄めになり、少々取り留めない electronica になっていた。 この作品もそれほど dance floor 指向は強く無いけれども、 リズムのメリハリが効いて、良くなった。 さらに、このアルバムではゲストの参加が効いている。
IDM以降ならではの微妙に歪んだ音色とギクシャクめなリズムが気持ち良い "Kozel" では、 Manukian の歌声に絡む Nick Artamonov による男性の歌声も良い。 細かく柔らかくアップテンポに刻まれるリズムに フィンランド (Finland) の Leo Sevets の jouhikko (bowed lyre) の歪んだ掻き鳴らしが絡む "Kruchu" もカッコよい。 しかし、ベストは、Farlanders (ロシアの rock 色濃い folk/roots グループ) の Sergei Klevensky の bag-pipe をフィーチャーした "Rubaha"。 bag-pipe だけでなくリズムを刻む音もアコースティックな楽器の音色を生かしたような 音作りになっている。そして、そこが気に入っている。
歪んだ synthesizer の音をそのまま使うような曲もあるけれども、 今後、"Rubaha" や "Kruchu" のような伝統的な楽器の音を生かしたような electronica を期待したい。
ちなみに、リリースした Lumberton Trading Company は2000年代に活動を始めたレーベルで、 他に、Faust や Michael Gira (ex-Swans) のリリース (もしくはその予定) がある。 イギリスのブライトン (Brighton, England, UK) で設立されたが、 現在は、ポーランドのクラクフ (Krakow, PL) に拠点を移している。
併せて、前の3作目のスタジオ・アルバムと、リミックス集も簡単に紹介。 (1、2作目のレビューと、 2003年のライブ盤のレビューは既にしている。)
曲目的にも、ライブ盤 Концерт (Concert) (Sketis, SKMR004, CD, 2003) (レビュー) のスタジオ盤だ。 deep house 的な感触を残した曲もあるが、 ビート感の無い、もしくは控えめな electronica な音空間に Manukian の詠唱が流れるような曲もある。 やりたいことは判るような気がするのだが、 音作りに失敗したか自分のオーディオセットとの相性が悪いのか、 空間的な広がりが感じられないもこもことした音になっているのが惜しい。
主にロシアのアーティストによるリミックス集も、去年、リリースされている。 Три Поля (Three Fields) を元ネタにした曲が多いせいか、dance floor 向けとは言い難い曲が多いし、 リミックスして面白くなったという程でも無い。 そんな中では、basic channel 的なセンスをベースにしたビート感のある Idioritmik, "Pear-Tree" や Motor, "Verejushki" が気に入っている。