ハンガリー (Hungary) のコンテンポラリな folk/roots シーンで活躍する 3人の女性歌手の華やかな3人の歌声が、 アコースティックで音数抑え気味ならがツボを押えたバックの演奏と併せて 楽しめる作品だ。 ちなみに、演奏しているのは、 演奏している曲はハンガリーの folk/roots をベースにしているものの、 伝承曲のカバーではない。 それも、それぞれがソロで歌を聴かせるというより、 3人の歌声によるアンサンブルを聴かせる作品だ。
Bognár Szilvia は folk/roots のグループ Makám に 歌手としてよくフィーチャーされていた女性歌手だ。 Szalóki Ági は gypsy brass をベースにしたミクスチャのグループ Besh O Drom (レビュー) の歌手として知られるだけでなく、ソロ名義でも作品をリリースしている。 Herczku Ágnes (voice) も Fono レーベルからソロ名義でも作品をリリースしている。 その歌い方は folk/roots 的といっても Márta Sebestyén 程には ビブラートを効かせず、ハイトーンですっきり伸びやか。 そういう歌声が重ねられる、明るい華やかさを作り出している。 ブルガリア (Bulgaria) のポリフォニーのようにもなるのだが、 小編成ならではの小回りの良さで楽しめる。
バックの演奏の鍵は、jazz の文脈での活躍も目立つ Dés András だろう。 tabla (おそらく) の細かく鋭いリズムで、全体の雰囲気をぐっと引き締めている。 そのリズムも、インド風だったり ("Somogyindia")、 drum'n'bass 風だったり ("Apókáé (For Grandpa)" の後半)。 このリズム処理が、単なる伝承的な旋律/歌の再現以上にしているように思う。
グループ Off Course や Lantos Zoltán の Mirrorworld など jazz の文脈で活躍する guitar 奏者 Juhász Gábor (レビュー) も随所で folk の域を越えたソロで演奏を引き締めている。 バックバンドのメンバーで最も有名なのは、 1990年代に舞台作品 Riverdance のバンドに参加していた ブルガリア出身でブダペスト (Budapest, HU) を拠点に Nikola Parov (Zsaratnok) だろうか。 Parov の kaval や gayda などの各種管楽器と、もちろん Mester Lászlo と Kovács Zoltán (Makám) の 擦弦楽器勢が、folk 的な雰囲気を沿えている。
正直、自分の好みとしては、もっと抽象度の高い歌声も使ったり 緊張感高いソロで歌声に対峙したりする展開もあった方が良いとも思うし、 この面子であれば、Lantos Zolt´n の Mirrorworld に 半ば抽象的な女性の voice が乗るような展開を期待してしまう所もある。 しかし、このプロジェクトの基となった Makám と聴き比べても、 音作りもぐっくとくっりきして良くなっているし、 適度な緊張感を伴いながらリラックスできる、充分に楽しめる作品だった。
特に jazz の文脈では Gábor Juhász、András Dés と 西欧風に名姓の順でクレジットされることが多いのだが、 ここではこの作品のクレジットに準じ、ハンガリー風に姓名の順としている。 ブルガリア出身の Nikola Parov は名姓の順だが、 それ以外の名は全て姓名の順になっている。